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スーパープレイヤーがマネージャーになると、途端に苦戦するワケ【シゴト悩み相談室】

キャリアの構築過程においては体力的にもメンタル的にもタフな場面が多く、悩みや不安を一人で抱えてしまう人も多いようです。そんな若手ビジネスパーソンのお悩み相談を、人事歴20年、心理学にも明るい曽和利光さんが、温かくも厳しく受け止めます!


曽和利光さん

  • 株式会社人材研究所・代表取締役社長。1995年、京都大学教育学部教育心理学科卒業後、リクルートで人事コンサルタント、採用グループのゼネラルマネージャー等を経験。その後、ライフネット生命、オープンハウスで人事部門責任者を務める。2011年に人事・採用コンサルティングや教育研修などを手掛ける人材研究所を設立。

CASE3:「頑張って指導しているのに、部下がなかなか成長しない」(35歳男性・IT関連会社勤務)

<相談内容>
現在営業マネージャーとして10人の部下を束ねていますが、部下がなかなか育たず、マネジメントの方法に悩んでいます。

自分はメンバー時代、常に100点満点の成果を上げるべく走り抜いてきました。部下にもそれぐらいの努力を望みたいのですが、今どきの若者はあとひと踏ん張りが足りなくて、いくらアドバイスをしても目標達成できないメンバーが何人もいます。

ただ指示を飛ばすだけではだめなのかと思い、自分が手本となってやって見せたり、ロープレ相手を買って出たりと、部下のために目線を下げ、骨を折っても結果は変わりません。

どうすれば、彼らはやる気になり、成果を出せるようになるのでしょう?いっそ彼らの自由にやらせれば、個性が発揮できるのかも…などと思い始めています。(IT関連会社・営業マネージャー)

若手時代は100点満点の成果を上げるべく走り抜き、今は10人ものできない部下を束ねている…ということは、おそらくあなたは営業として非常に優秀で、会社にも期待されている方なのでしょう。それを前提に考えると、部下が育たない原因がいくつか推察されます。

■10人全員を見ているつもりでも、実際には目が行き届いていない可能性

大前提として、あなたがいくら優秀でも、10人の部下を一人で見るのは少々無理があります。

「認知限界」と言って、人は誰しも認知能力、情報処理能力に一定の限界があります。さまざまな研究結果がありますが、マネジメントするメンバー数としては6人が限度と言われています。例えば、「超合理的」な働きが求められる軍隊のような場では、6人グループで行動させるケースが多いと聞きます。

つまり、あなたが見ているつもりでも、10人全員には目が行き届いていない可能性が大。それが意思疎通の希薄化などにつながっているのかもしれません。

打開策としては、例えば10人を2チームに分けてそれぞれのチームにリーダーを置くなど、「インフォーマルな中間階層」を作ること。リーダーにメンバーの管理をある程度任せ、あなたは主にそのリーダーをマネジメントすれば、スムーズなチーム運営ができるでしょう。メンバーが抱える問題にも、よりタイムリーに気付くことができそうです。

■あなたの営業アドバイスが間違っている可能性

世のスーパープレイヤーは一般的に、「自分がなぜスーパープレイヤーなのか」を言語化する能力が低いと言われています。

ヘンリー・ミンツバーグという経営学者が、自身の著書『マネジャーの仕事』の中で、実際のマネージャーの行動に随行し、観察した結果をまとめています。それによると、経営者に「よい経営者とは?」という質問を投げかけると、経営戦略論や組織論など教科書通りの答えが返ってくるそうです。

しかし、実際の経営者の行動、言動を観察すると、「飛んできた事項をその場で瞬間的に判断して次々に処理し、自分ではボールを持たない」とか「ごく短時間で一つの業務を回している」など、言っていることと全く違う行動を取っているのだとか(ちなみに本書内でミンツバーグは、これらの情報をもとに、5項目のマネジメントの仕事の特徴を示し、10項目のマネージャーの役割を提示しています。ぜひ一度、読んでみてください)。

つまり、「ピアニストが自分の指の位置や動きを認識しながらピアノを弾くことはない」とか、「日本人である我々が日本語を話すとき、文法なんて意識しない」のと同じこと。プロは、何をすれば成果が出るのかなんていちいち考えることなく、頭の中で最良の方法を自動処理して、動いているのです。

つまりは、営業のプロであるあなたが「こうすれば営業成績が上がる」と部下にアドバイスしていることは、実は的を射ていない…という可能性は大。上司のアドバイス通りにやっても成果が上がらないから、部下のやる気は上がらないし、上司であるあなたへの信頼度も下がりっぱなし。だから言うことを聞かない…なんていう悪循環が生まれているのかもしれません。

お勧めしたいのは、あなたの営業としての行動を第三者に見てもらい、「形式知化」してもらうこと。「形式知」とは、言葉で客観的に表現できる知識のことです。

信頼しているナンバー2や、プレイヤー時代の上司など、「あなたのヘンリー・ミンツバーグ」になってくれる人を探し、意見をもらってみてください。あなたが部下にアドバイスしていたものとは全く違う意見が上がってきて、驚くことになるかもしれません。

■「“自由”が部下の能力を発揮させる」という考えは間違いのもと

マネジメント方法に行き詰まるあまり、「いっそ自由にやらせれば、個性が発揮できるのかも」などと考えているようですが、それは間違い。止めておいたほうがいいでしょう。

師弟関係を示す思想において、日本には昔から「守破離」という言葉があります。
まずは、師匠から教えられた型を「守」り、それを自分のものにする過程で少しずつ改善を加えて師匠の型を「破」り、自分のスタイルが確立できたら師匠の型から「離」れて自由になる。この段階を踏んでこそ、1人前になれるという考え方です。

つまりは、型があってこその型崩し(=自由)なのであって、はなから自由であってもそこから学べるものはないのです。

部下に早く自走してほしかったら、初めにあなたの「型」にはめてしまうことです。
前述した「自身の営業スキルの形式知化」をもとに型を作り、部下にそれを徹底させれば、自然と成果は上がるはず。そして何度かの成功体験を積ませてから徐々に自由にさせましょう。

すでに部下との信頼関係が崩れかけていて、あなたの指示をあまり聞いてくれない状態に陥っているならば、「半年でいいから、このやり方でやってみてくれ。半年だけ、自分を信じてほしい」と説得してでも、型にはめてください。

「プロであるあなたの、正しい営業の型」なのですから、型にはめるのは半年で十分です。成果につながりはじめれば、彼らの意識はがぜん変わるはずですよ。

<アドバイスまとめ>
間違ったアドバイスをしても部下が成長するはずなし。第三者の手を借りて「正しい営業スキル」を形式知化し、部下を型にはめるべし!

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EDIT&WRITING:伊藤理子 PHOTO:平山諭  

 

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