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パパと娘、一緒にお風呂に入るのは何歳までOK?

親子入浴は日本独特の文化

父親と娘
世界的に大人気の宮崎アニメ「となりのトトロ」で外国人がギョッとするのが、親子の入浴シーンなのだそうです。父親と幼い姉妹の微笑ましいコミュニケーションの時間として描かれているこのシーンに、日本人の多くは何の違和感も持たないかもしれません。

アメリカでは、シャワーが主流なこともあり、幼児の入浴介助も同性の親が服を着て行うことが多いようです。小学生の女の子が「パパとお風呂に入っている」と作文に書いたら、性的虐待で親が逮捕されることも。 「風呂でのスキンシップは日本の文化だ!」「日本人はこれでいいんだ!」と、娘との入浴を楽しみにしているパパは思うかもしれません。でも「じゃあ、いつまでなら一緒に入れるんだろう?」というのも悩ましい問題ですよね。

ちなみに、「となりのトトロ」に出てくるお姉ちゃんのサツキの年齢設定は小学校6年生。アニメでは胸もぺったんこですが、リアル小学6年生は、乳輪の下から乳腺がしこりのようになってふくらみはじめ、性毛(陰毛)が生えてきて、月経も始まる頃です。

「ありえない!」と思いますか? それとも「ギリギリセーフ」?

■「パパ風呂」卒業のタイミング

娘の「パパ風呂」卒業のタイミングは、小学校3~4年生頃が多いようです。女の子の第二次性徴の始まりは、早いと7歳、遅くても11歳頃と言われています。平均が9歳ですので、ちょうどこの頃に重なりますね。

女の子のからだの成長は、「乳房の発達」→「性毛の発生」→「初潮」→「腋毛の発生」→「皮下脂肪の増大」といった経過をたどりますので、「胸がふくらみはじめたら」「性毛が生えてきたら」というのが、卒業のタイミングなのでしょう。

しかし「娘のからだが変化し始める小学校低学年まではパパと一緒にお風呂に入ったほうがいい」ということではありません。パパと娘のコミュニケーションはお風呂以外でも取れますので、「パパ風呂」卒業が早い分には、問題はないようです。「パパ風呂」卒業は、当事者である娘、パパ、そしてママやきょうだいといった「家族の誰かが嫌がった時」だと思っておきましょう。

「パパ風呂」卒業には、3つのパターンがあるようです。

1.娘がいやがる

からだが大人に向けて変化していく第二次性徴の時期は、心が急激に成長していく「思春期」でもあります。友達との違いを意識しはじめたり、恋愛感情を体験したり、これまで当たり前だと思っていた親の言動に疑問を持ったり、大人を批判的に見ることを覚える時期でもあります。

異性である父親に自分の裸を見られるのに抵抗を感じるようになった娘から、ある日突然「もうパパとは入らない!」と宣言されるのは、少なくないパターンです。

パパとしては複雑な心境になりますよね。これまで無邪気に「パパ、パパ」となついてきていたのにと、急に距離を置かれたようで淋しく感じてしまうかもしれません。でも、それは娘が順調に成長しているしるし。喜ばしいことなのです。あきらめましょう。

2.パパがいやがる

女性の体つきになってきつつある娘の裸を見るのは、父親としては照れくさくもありますよね。ずっと一緒にお風呂に入ってきたから、自分から断るのは、難しいお年頃に突入する時期の娘に自分から距離を置くようで、気が引けてしまうかもしれません。決して性的な目で見ているわけではないのだけれど、娘やママから自分が試されている気持ちになったりするかもしれません。

でも、そんな気持ちになったら、潔く断りましょう。成長期を迎えた娘が女性として見えてくるのは当然で、おかしなことではありません。父親が自分を女性として見ていることは、娘は敏感に感じ取ります。娘の裸に「ドキッとしたらアウト」と心得ましょう。

あるパパは「娘の同級生に生理が始まった子がいると聞いて」それとなく時間をずらし、一緒にお風呂に入る状況を避けたそうです。「疲れているから、ひとりでゆっくり入りたい」と断るのもいいですね。ママとも作戦を共有しておけば、力になってくれるでしょう。

最初は淋しがるかもしれませんが、父親からの「娘が女性として成長していくことへの配慮」は、ほんの数年後には娘に理解され、パパへの信頼へと繋がっていくでしょう。

お風呂には一緒に入らなくなったものの、平気で目の前を裸でうろつく娘に呆れることもあるかもしれません。その時は「プライベートゾーン(水着でかくれるところ)は、親であっても人に見せない配慮をしよう」と教えましょう。「他人のプライベートゾーンは見たり触ったりするものではない、無理に見せられたり触られたりしたらイヤだと言っていい」という概念を教えることは、これから娘が性的な被害に遭わないようにするためにも大切なことです。

3.ママやきょうだいがいやがる

パパも娘も喜んで一緒にお風呂に入っているのに、周りの家族が嫌がることもあるでしょう。もしかしたら、夫婦関係やきょうだい関係が「パパと娘が仲良しなのに嫉妬して」ギクシャクしているサインかもしれませんので、家族で話し合ってみましょう。

話し合えないようであれば、かなり危機的な状況かもしれません。本当は嫌がっている娘の気持ちを察知した他の家族が、嫌がる気持ちを代弁していることもあるようです。

■中高生になっても一緒に入るのはOK?

「パパ風呂」卒業のタイミングは、家族関係や家庭の価値観(ママが子どもの頃、いつまで父親とお風呂に入っていたかなど)にも左右されます。 中には、中学生や高校生になっても父親とお風呂に入っていたという人もいて、テレビなどでも「仲良し父娘のエピソード」として、まれに見聞きします。

それで問題のない家族もあるのでしょう。しかし一般的には、これは要注意だと考えた方がいいでしょう。カウンセラーとして聞く「思春期以降の父親との入浴エピソード」は、性的な傷つきや、その後の生きにくさに繋がっていることがほとんどです。

・父親が怖くて逆らえなかった。
・父親が喜んでいるので、断れなかった。

などが理由として多く語られます。娘が父親に率直にNOを言える関係なのかどうかは、シビアに検証しておいた方がいいでしょう。

■ママの役割も大切

習慣を変えるのは大変なことですから、ママが時々「そろそろ卒業したら?」と介入するのも、大切なことですね。機嫌よくパパとお風呂に入っているように見えて、実は嫌がっていた場合、娘は「ママは助けてくれなかった」「ママは気付かないふりをした」と思います。パパと娘がどんなに仲がよくても、どんなに理性的でステキなパパでも、お風呂という密室は、性虐待の高リスク状況だということは頭に入れておきましょう。

お風呂に一緒に入らなくなったら、風呂場や脱衣所を覗くのもNGです。また、一緒にお風呂に入っている間でも、子どもが自分でからだを洗えるようになっているのに、父親が娘の性器を洗ったり、じろじろ見たりするのはNGです。

「パパ風呂」は、これまで積み重ねてきた「娘との幸せな時間」です。きれいに卒業して、いい関係を続けていきましょう!(執筆:福田 由紀子)

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