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エスカレーターの「歩行禁止」は浸透しない?

7月21日から8月31日まで、全国の鉄道事業者51社と空港などが主催、国土交通省と消費者庁が後援してエスカレーター「みんなで手すりにつかまろう」キャンペーンが実施されていました。

そもそもこのキャンペーンは、事故防止のためエスカレーター利用時に「手すりにつかまる」ことを主眼においたものだったようですが、「エスカレーターでの歩行禁止」という面が強調され、賛否両論が出ているようです。

■東京では年間平均1000人以上がエスカレーター事故の被害に

消費者庁によると2011年から2013年までの3年間、東京消防署管内で3865人がエスカレーターによる事故で病院に搬送され、うち60%は65歳以上だったとのこと。事故事例としては、エスカレーター歩行中にバランスを崩して自ら転倒してしまったケースや、歩行している人にぶつかってバランスを崩し転倒したケースなどが紹介されています。確かに、平均すると東京だけで年間1000人以上の負傷者が出ており、その原因のひとつがエスカレーター歩行によるものであれば深刻な問題です。

■海外に比べてスピードが遅い日本のエスカレーター

私自身も日本ではエスカレーターで歩くことが多いのですが、大きな荷物をもっていたり、小さな子供を連れて止まっているときなどは、歩いてくる人にぶつかられて嫌な思いをしたり危険を感じることもあります。

一方、現在住んでいるシンガポールでエスカレーターを歩くことはまずありませんし、歩いている人もほとんど見かけません。その理由はたった1つ、エスカレーターの速度が速いため。歩く必要がないからです。感覚的には日本と比べ2倍ほどの速度でしょうか。帰国するといつも、空港のエスカレーターのあまりの遅さにショックを受けるくらいです。

事情は他の国も同様のようで、元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の吉越浩一郎さんも日本のエスカレーターの遅さについて、著書『なぜか仕事がうまくいくリーダーの習慣41』の中で指摘されています。

■エスカレーター歩行を減らすために、できることは?

吉越さんの見解によると、そもそも日本のエスカレーターは子供やお年寄りなどに配慮して意図的に遅くしてあるのではないかということですが、それにより転倒などの事故が起こっているのであれば、まさに本末転倒です。

実際、かなり速いシンガポールのエスカレーターでも、親が並んでしっかり手を握っていれば子供の事故を防げることは私自身も経験していますし、お年寄りも自分で怖いと感じるようであれば、エレベーターを使うなどの対策は講じられると思います。

ただやみくもに「エスカレーターの歩行は危ないのでやめよう」と呼びかける前にまず、現在のエスカレーターのスピードを再検証し、使用する人が「これならば歩かなくてもいい」という速さに調節してみる、そしてそのスピードについていけない人の利便性を損なわないよう、その他の手段を検討する、という作業が必要なのではないでしょうか。

すでに始まっている日本の高齢化社会で、このような問題はこれから次々と発生してくると予想されます。その中で私たちがこれまで普通だと考えていたことも、まずその前提から疑い、考え直していくことが求められていると思います。

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