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高速道路の標識に隠されたヒミツ

高速道路をドライブしていると目にする道路標識。立ち止まって見る機会は少ないと思いますが、よく見てみると漢字の点の数が省略されているようなアレンジが加えられた独特の文字が使われていることがあります。どこか心が和んでしまう不思議なフォルムを持った文字。これは「公団ゴシック」といって、運転中でも認識しやすくするために日本道路公団が独自に開発したフォントなのです。

■文字の正確さより視認性を求めた「公団ゴシック」

高速道路の標識の和文フォントですが、2010年に「公団ゴシック」から「ヒラギノ角ゴシック体W5」に変更になりました。ヒラギノはiPadなどのアップル社の製品でも採用されていた書体ですので、見慣れている方も多いと思います。なので現在は、徐々に全国の高速道路の標識は変更がおこなわれているという時期にあります。

公団ゴシックの特徴は、文字の正確さよりも認識のしやすさを重要視している点にあります。元の漢字との違いや省略の方法がユニークなのです。

高速道路標識

まず画数が多い少ないに関わらず、どの漢字も同じ大きさに揃っています。そして潰れているように見えてしまう画数の多い漢字は、文字のパーツを省略され、点、線の数や位置も変更されていることがあります。たとえば「三鷹」の「鷹」という字。このまま表示すると判別しにくくなるため、横線の数や形に大きな変更が見られます。「豊田」の「豊」の“豆”の部分は一本、線が省略されています。「宇都宮」の「都」は“ノ”の部分の上部が省かれています。「川越」の「越」はハネがなくなり、縦のラインが揃った印象です。

また、公団ゴシックは文字枠いっぱいに漢字を変形して入れるため、全体的に四角く、線が交わる箇所や曲がる箇所のでっぱりがなくなったフォルムをしています。文字の線がある位置も元の漢字と変わっている箇所が多くあるので、チェックしたいところです。

■高速道路から消えつつある「公団ゴシック」

公団ゴシックは1963年から使われていて、独特なその形体からフォントファンの熱い視線を浴びていました。ですが、開発者が亡くなったあと書体の統一性が保てなかったこと、省略のしかたが独特なため誤字なのでは?という指摘があったなどの要因もあり、惜しまれつつ廃止となりました。

また廃止の理由のひとつに、並ぶ文字の横線の位置を揃っているように見せるというパターンが存在し、地名などによっては一度作った文字を使いまわせないという点も挙げられます。たとえば「東京」は「東」のなかの“日”の部分と、「京」のなかの“口”の部分の天地が揃っているように見せます。なので「第三京浜」に使われる「京」と、東京に使われる「京」は同じものにならないのです。

徐々にヒラギノの標識に取り換えられ、消えつつある公団ゴシック。その多くはまだ残っていますが、今後は目にする機会も減るので珍しいものになることでしょう。

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