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左右の体温が違うって異常なの? 医師が教える「正しい体温の計り方」

■左右のワキの下の体温が違っている、という単純な疑問

病気の時って必ず体温を測定しますけど、正しい体温の計り方って知っていますか? 風邪を引いた時など、日本ではワキに体温計を挟みますが、左右で体温が違ったという経験がある人もいるかと思います。右と左ではどっちが正しい体温なんでしょうか。当院スタッフより「左右の体温が違うんですけど……」という質問がありました。

そんな時に「同時に計らないと同じっていえないだろ!」なんて対応をしていたらスタッフはとっとと辞めてしまいますから、「今度、チャンと調べておくね」と優しい言葉を返した私です。

■ワキの下、口、お尻で体温を測った場合の違い

体温計による体温測定は、心臓から手足の末端まで流れている血液の温度を間接的に測定していることになります。心臓での温度に比べると手足の温度は自然と下がっていきますので、体の中心に近いところで測定した体温ほど高くなります。体の表面は体温が異常に高くならないように冷却する仕組みになっていますので、本当は体の中の温度を測定しないとなりません。

手術を受けたことがある人は、正確な体温を測定するために、お尻から細い紐状の体温計を直腸に差し込むという状態を実際に経験しているはずです……。「お尻に体温計を差し込みました」と伝える麻酔科の医師って聞いたことないけど、インフォームド・コンセントとしては必要かもです。さすがに日常でお尻に体温計を差し込む人はあまりいませんので、体内の温度を測定するという感覚に近いものとして口にくわえる方法があります。

海外ではワキの下より、口(正式には舌の下)で測定する傾向があります。測定した温度は、

脇の下<<舌下、直腸

となりますので、風邪のときなど発熱しているか・していないかを判定するには、常に自分の体温をどこで測定してどのくらいか?ということを把握しておく必要があります。

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テルモ体温研究所より)

■日本人の平熱って何度が平均的なんでしょうか?

36度台なら平熱、37度を超えていたら熱があると一般的に判断(診断じゃないですよ)していますが、これって本当でしょうか? 5月くらいになると外国人の方って短パン、Tシャツになりますけど、日本人はそこまで薄着にはなりませんよね。ということは人種によって平熱が違う可能性がありますね。

日本人の平均体温って基礎となるデータは論文として1957年に発表されたものが基になっているのです。今から60年近く前のもの!! 「健常日本人腋窩温の統計値について」という東大の田坂定孝教授によって書かれた論文です。

これによりますと、実は平均体温は37度付近であることがわかっています。

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体温や冷えのとらえ方 実は誤解だらけかも!?―シティリビングWebより)

とにかく、病気でなく体調のいい時に自分の平熱を知っておくことが必要です。

■体温の左右差について

話がだいぶ飛びましたが、当院スタッフの素朴な疑問への回答に戻ります。心臓は体の中心より左に寄っていますし、心臓から体に血液を送り出す太い血管は左方向に出ていますので、結論としては体の冷却システムによって左のワキの体温の方が右のワキより高くなっていることが多いはずです。なぜ「多いはずです」という言い方になるかというと、本当に実験的に比較するには両脇同時に測定して左右差があるかを証明しないといけませんが、そんな測定方法を通常採用している人はまずいませんから。

そして非常に高度な科学的観測手法としては(この辺りは理系のオッサンが持ち出しそうな理論です)が、「観察者効果」と呼ばれる現象を考慮しないといけません。ある実験を観察する人がいるとその人の存在自体が実験結果に影響を与えるという難しい理屈が物理学、とくに量子物理学の世界では重要視されています。医学的研究・実験でも観察者のバイアスがかからないように二重盲検とかが使われるのもその観察者効果の影響を少なくするためなんです。

こんな面倒な解説をいたいけなスタッフの質問に対していちいち返していたら、多分かなりの確率で嫌われる可能性が大ですので、「両脇の体温が違っても心配ないよ」と優しく回答する私です。

注意:脊髄の疾患などにより片麻痺がある方は左右のワキの体温が違っています。

(桑満おさむ)

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