東京空港支店長兼JALスカイ社長の屋敷です。
今年も忘れることができない日を迎えました。
あらためて、520名の御霊のご冥福をお祈りするとともに、重傷を負われたお客さま、ご遺族、ご関係の皆さまに心よりお詫び申し上げます。
  
当時、私はグランドスタッフとして成田国際空港(当時は新東京国際空港)でチェックインや搭乗口でのご案内業務を担当しておりました。「JAL123便の機影が消えた」とテレビのフラッシュニュースが伝えたときには、心臓の鼓動が激しくなり、間違いであってほしいと願いながらも事故は現実となりました。私は連日放送される悲惨な現場状況を目のあたりにして言葉もなく、ただただ、お客さまにお詫びをしていました。事故は二度とあってはならない。「安全のためには臆病者と言われようと立ち止まる勇気を持とう」と決心しました。
  
あれから34年が経ち、御巣鷹山事故以前に入社していた社員も極端に少なくなりました。
私は今年もJALスカイ社員と一緒に御巣鷹山に登ります。
移動中のバスの車内では、当時のニュース映像や社員の経験を語り継ぐビデオを見ながら事故を振り返り、事故現場で祈りを捧げ、安全に対する決意を新たにします。
登山道は当時に比べると整いましたが、私も年を重ね、ゆっくりとした歩調で登るようになりました。しかしながら、御巣鷹の尾根に眠る御霊は事故当日のまま、年をとることはありません。夢や希望、家族との団らんを一瞬にして奪われた無念はいかばかりかと思うと、胸が張り裂けそうに痛みます。
  
私たちに唯一できることは、安全運航を貫き通すことです。
  
にもかかわらず、昨年以降、複数のアルコール事案を発生させ、私たちは航空輸送の安全確保に関する事業改善命令を受けました。お客さまやご関係の皆さまの信頼を裏切ることになり、お詫びの言葉もございません。
その後、社長の赤坂を委員長とする社内検証委員会を立ち上げ、私も委員の一人として参加しました。今までの取り組みや過去の事故の教訓を十分生かしきれていなかったことを真摯に反省し、多くの社員の声や有識者の意見を収集・分析し、「社内検証委員会報告書」として取りまとめました。それをさらに社員一人一人が自分の事として捉えるよう、それぞれの職場で議論をする場を設けました。また、社員全員で創り上げるものである「安全」の定義を統一するために安全憲章(※)を改定しました。しかし、これは私たちJALグループで働く全社員のゴールではなく、まさにこれからが「安全・安心の再構築」を行う正念場です。
安全は「命を守ること」であり、JALグループで働く全社員一人一人が創り出すものです。
私が担当する空港の仕事は、お客さまの目に触れるチェックインカウンターや搭乗口での業務はもちろん、安全に航空機が離着陸するためにお客さまやお手荷物、貨物の重量の把握と重心位置の計算に関わる業務や、貨物の搭載に関する業務など、多岐にわたり、そのすべてが「尊い命をお預かりする仕事」です。運航乗務員や客室乗務員と連携し、お客さまに安全・安心をお届けするために、社員同士の確認会話や危険を予知する訓練などをとおして、不安全につながる事象を見つけ出し、解決しきる必要があります。
そうしたときに、社員一人一人が安全を大前提に業務に取り組めるよう、意識を醸成し、環境を整備してまいります。
  
私は御巣鷹山事故以前に入社していた数少ない社員として、そして社内検証委員会の委員の一人として、過去の事故を風化させず継承し「安全を大前提とする意識」、「課題を解決しきる仕組み・風土」、「安全を担保する組織」の醸成に情熱を傾け、力の限りを尽くしてまいります。
  
(※)安全憲章とは、航空会社にとってかけがえのない安全に対する決意と、安全に関わる基本的な考え方、それに基づく行動を示しているものです。今回の改定では、安全とは「命を守ること」と明確に定義し、他の何とも比べられるものではなく大前提であることを明確化しました。

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