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なぜタクシーにはLPガス車が多いのか?

日本の道路を走るタクシーの9割強がLPガスを燃料としています。LPガス(Liquefied Petroleum Gas)は液化石油ガスのことで、家庭の給湯器の熱源などにも使われている燃料の一種です。

個人タクシーはガソリンエンジンの車が主流ですし、最近はハイブリッドのプリウスのタクシーも見かけるようになりましたが、それでも圧倒的にLPガスのタクシーが多い。なぜタクシーには、LPガス車が多いのでしょうか?

■LPガスは安くて排気もクリーン

コストが優先されるタクシーなどの営業車において、LPガスの安さは魅力的です。実際の値段で言うと、2015年9月のLPガスの値段は、東京都では76.5円/ℓと、リッターあたり100円以上する軽油よりも大幅に安い。ガソリンや軽油との課税率の違いも影響しているようです。また、街中でときどき見かけるLPガススタンドでは、タクシー業者向けに一般ユーザーよりも安い値段で販売するスタンドもあるなど、優遇されている面もあります。

ちなみに、LPガス車の燃費はガソリン車とあまり変わらないようです。以前は燃費の良さもウリでしたが、この10年で純ガソリン車もクリーンディーゼル車も燃費がかなり良くなっているので、その差が目立たなくなっていると考えられます。

LPガスは低燃費で排気がクリーンという理由で、代替燃料として注目されている時期もありました。実際、ガソリンやディーゼルに比べて排気ガス中の有害物質が少ないので、タクシー業界のイメージアップに貢献している部分もあります。

また近年では、タクシー以外に、LPガストラックが増えているそうです。低公害で価格も手ごろ、なおかつ「クリーンなイメージを抱いてもらえる」というメリットから、運送業や自治体の清掃事業、宅配便や生協の配送トラックなど各方面でLPガスが使われています。

■LPガス車は盗まれにくい!?

さらに、LPガス車は「盗まれにくい」とも言われます。盗んだところで、通常のガソリンスタンドでは給油できません。LPガススタンドも数が少ないため、どこで補給すればよいかわからない。結果、車泥棒からは敬遠されるようです。また、タクシーは多くが最近の乗用車では一般的ではないコラムシフトレバーを採用しているため、扱いづらいという点も防犯に貢献しているようです。

現在、日本で走っているタクシーの9割はトヨタ製(1995年に発売したクラウンコンフォートが主流)です。2014年9月に日産自動車がタクシーのベース車となる「セドリック営業車」の生産を終了したため、現在、セダン型タクシー向け車両を生産しているのはトヨタのみになりました。

そのトヨタも2017年末までに、LPガスオンリーによるタクシー向け車両を生産終了すると発表しており、2015年の東京モータショーにて発表されたLPガスハイブリッドシステムを搭載したミニバン型のタクシー専用車が近い将来、タクシーのベース車として普及していくことになりそうです。現在のようなLPガスオンリーのエンジンを積んだセダン型タクシーは、やがて無くなってしまう運命にあるようです。

■なぜ一般向けに普及しないのか?

排気はクリーンで燃費もいいとなれば、LPガス車をもっと一般ユーザーの車に普及させればいいのでは?と思いたくなりますが、なかなか難しそうです。その理由は以下のようなことが考えられます。

・LPガスを充てんできるスタンドが少ない
・定期的なガスタンクの交換が必要など、メンテナンスが大変
・ガスタンクがトランク内で大きな位置を占めるので邪魔
・年間走行距離がタクシーと比較して少ない一般のユーザーにはメリットが少ない
・ガス=爆発のイメージで恐怖感を覚える人がいる

コスト面のメリットが年間10万キロ以上走るタクシーほど得られないこと、インフラの未整備やガスへのマイナスイメージといった点で、LPガス車はやはり一般には普及しづらいようですね。

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