突然ですが、皆さんの周りで「男性で育児休業を取得した人」はいますか?
たぶん、ほとんどいないか、あってもごく少数なのではないでしょうか。そう、2014年度の育児休業取得率は、男性だと2.30%(※1)。前年度から0.27%上がってはいるものの、実際に育休を取得した男性というのは、まだまだ少ないと思います。
その中で、1年前に、約半年間にわたって夫婦揃って育児休職を取得したので、その時のお話を深堀りしてみたいと思います。夫婦一緒に育休するってどんなものなのか? といった生態系をわかってもらえればと思います。私自身は普通の会社員で、1歳半になる娘とサラリーマンの夫と3人で暮らしています。
■どうして夫婦で育休を取ろうと思ったのか
よく言われるのが、「どうして旦那さんも育休を取ろうと思ったんですか?」ということ。
一番の理由は、子供が生まれた時に子供に不整脈が見つかり、2ヶ月間ほどの入院と、その後通院生活を余儀なくされたことです(今はほぼ完治していますが)。
また、単純に子供が生まれる前から「2人で育休取れたら一緒に育児できる最高の機会だし、いいよね」という話をしていました。「子供はすぐに大きくなるし、初めの数ヶ月は大変だと言うから2人で子育てしたいね」と。
実際に子供が生まれた後に夫が会社の上司に打診してくれた際に、「お金は大丈夫なのか?」ということは不安視されましたが、今でこそ育児休職給付金は半年間はそのときの給料の約67%もらえますし(※2)、「まぁ制度としてはあるから希望するなら」、ということでそのまま休職をOKとしてくれました。社内で取得している人は、前年度実績を見ても数万人中数人でしたが。
もちろんこのように父親が育休をとるのは簡単ではないと思います。今でこそ、「女性の活躍推進」、それと同時に「男性の家事育児進出をもっと積極的に」なんて言われていて、その一環として男性の育児休職の取得が促進されていますが、実際に取得した、なんて人を私自身も夫以外はほとんど知りません。
■反対派も存在した
とはいえ、夫が育休を取ることに社内でOKが出ても、別のところで反対されたりもしました。それは会社の人とかではなく、夫の両親です。特にお義父さん。お義父さんは定年を過ぎた世代なので、当然その頃は男性が外に働きに出て、女性は家で家事育児を、という「会社を休むなんてだめだ、妻である私が普通に育児をすればいいのでは?」と反対されましたね。
「いやいや、夫婦一緒にじっくり育児をできる良い機会だし、それに会社は休むけれどスキルアップのために勉強もしたい」、という理由で結局は反対を押し切りながら夫は育休を取得。とはいえ、育休期間中は夫の実家に頻繁に孫の顔を見せに行けたため、心配されながらも結果オーライ、とに勝手に思っております。
■育休中の生活ってどんなの?
育休中の生活は、夫婦2人とも働きには出ていないため、毎日育児です。当時のだいたいのスケジュールはこんな感じです。
8:00 三人で起床、授乳
10:00 家事(洗濯など)、授乳orミルク
11:00 夫婦交代で昼ごはん準備
12:00 昼ごはん、授乳、出かける準備
13:00 外出
17:00 帰宅、授乳
18:00 夫婦交代で晩ご飯準備
19:00 晩ご飯、授乳
20:30 どちらかが子供をお風呂に入れる
21:30 寝かしつけ〜(時間のかかる日は三時間くらいかかる)
23:00 自由時間
1:00 就寝
お互いが主婦(主夫)というイメージでしょうか。交代でご飯を準備し、その間一方は育児。生後3ヶ月頃〜生後9ヶ月頃に一緒に育休していて、その当時ってまだまだ子供も寝かしつけに抱っこを長時間しないといけないとか、夜泣きもあったりする時期だったので、交代できるというのは本当に精神的にも肉体的にもよかったと思います。
また毎日が育児の日々なので、休日は混んでいるけれど平日は混んでいないところに出かけることができたりして、なんというか生活の質が向上したかのように感じられました。
■夫婦で一緒に育休を取って起きたこと
このような生活をしている間、私たち、そして周りにはどのような影響があったのでしょうか。私たち視点ですが、ちょっと考えてみたいと思います。
・会社
一番迷惑をかけているのが会社ですよね。しかも私と夫は同じ会社であるため、この間、一気に2人の人材を失い、そのしわ寄せが他の社員の方にいくことは否めません。そのため育休を取得する立場からしても、制度があるからとはいえ、感謝の気持ちは多分にあります。それもあって、育休中に復帰後に活かせるスキルを身につけて挽回しました。詳しくは後述しますが、それができたのも2人で一緒に育休をしたからこそ、時間と心の余裕があったからだと思います。
・夫婦
夫婦間に起こったことでそこまで悪いことはなかったと思います。毎日一緒にいるので、それがしんどい人はしんどい、くらいでしょうか。その分、会話もたくさんできて物事もスムーズに進むし、お互いが主婦(主夫)なのでどちらも家事育児ができるので、どちらか一方が出かけても家は回ります。私じゃないとできなかったことは、授乳くらいでしょうか。
・子供
育休したことへの子供の影響は推測なので、あくまで体感ですが、とりあえず子供は「ママじゃないとだめ」という状態はありませんでした。もちろんパパは遊び担当、ママは泣いた時の慰め担当、というふうに得意分野は違えど、一方がいなかったら泣いて泣いてどうしようもない、というのはありませんでした。
あと、親の精神的な影響は子供にもすると思っています。というのも、夫婦一緒に育休した時の私たちの精神状態はとても健全だったため、娘もそれにいい影響を受けて、よく笑っていたのかなと思います。あと人見知りを全然しません。一般的には、父親も一緒に育児にコミットすると、子供の社会性が発達すると言われていたり。その効果の程はわかりませんけれども。
・社会
ちょっと壮大な感じですが、夫婦で育休したことへの社会の影響も考えてみましょう。短絡的に見れば、約半年間、国としては税金を納めてくれる労働力を失うという見方もあります。しかし、そもそもなぜ男性の育休はいま社会全体で促進されているのでしょうか。それは、男性が家庭進出することによってその反面女性の社会進出を促し、女性の労働力確保や、さらには第二子出生率を上げて人口を増やす、という目論見があるからです。
男性の育休と第二子出生率の関係は、男性の家事・育児時間が長いほど、第二子出生以降の出生割合が結果的に多いんですね。(※3)
男性が家事・育児を行うからこそ、夫婦も二人目以降を安心して生み育てられるのだ、という明確なデータがあるわけです。実際に我が家としても、今は娘も1歳半になりましたが、子供はあと最低でも1人は欲しいなと思います。これが、例えば夫が家事も育児も全然してくれなくて(本人は希望しているけれど時間が捻出できない場合も含む)ほぼ一人で家事育児をしなければならない、と思うと、手一杯で、もう一人・・・とならないかもしれません。
つまり長期的に見れば、夫婦が安心して子供を持って働き続けられるというのは、社会にとって財産なわけです。働いてなおかつ人口を増やしてくれるわけですから。だから、女性の社会進出と男性の家庭進出、そしてそれを応援する社会の雰囲気の醸成が必要なんですね。
■育休はキャリアにとってブランクなのか
社会にとって長期的にはメリットがある、とはいえ、やはり気になるのは個人としてのキャリアじゃないでしょうか。よく、「育児休業」という名前だけに、会社を休んでいるからキャリアもストップ、みたいに思われたりしますよね。しかし、個人的には育休中の過ごし方次第で、全くそんなことはないと言える思います。
実際に育休中は、子供が寝てからの自由時間こそが創作活動ということで、夫婦で活動していました。夫はプログラミングの勉強をしてウェブサービスをリリースしたり、一緒にアプリを開発したり。私自身は産休中から始めたブログによって、html〜CSS周りの知識やSEO、ウェブマーケティングを勉強することができました。一から自分でじっくり勉強しながらやることによって、会社にいただけでは学べないことも学べたのかなと思っています。
復職してからの今は、私は同じ部署に戻ったものの、ウェブ関連の解析などに詳しいということで、その分野を任せてもらったりしています。また、独身時代にはわからなかった視点で物事を見るようになったこともあり、例えば新しいサービスを考える際にワーママとしての視点を意見するとか、そういったことも活かせるようになりました。
一概に、育児休業というのはキャリアにブランクがある、というのは短絡的すぎる気がします。もちろん、本来は働いているべき大半の時間を育児に費やすわけですが、育休は過ごし方次第で無限大のプラスになる期間だと感じています。
とはいえ、周囲が育休を取るような会社でなければ、出世競争に負けてしまうといったこともあり得るのかなぁと想像できます。この辺りは、みんなが意識してもっと積極的に家庭にも進出できたらいいのになぁ、と思っています。
■今後育休を取る予定の女性・男性へ
そういうわけで、夫婦、そして子供、会社、さらには社会にとっていい影響を与え続けられるような、ポジティブな育休を男性も女性も取得してほしいと思います。
まだまだ、「女性は家庭に入り、男性は仕事」という古い価値観があるのも事実ですが、時代は変革期にあり、育児世代が変えなきゃ誰が変えるんだ、と個人的には思っています。いきいきと働き続けることができて、そして子育てもしやすく、色んな選択ができる多様性ある社会を、みんなで作っていきたいですよね。一緒に発信していきましょう。
一ブロガーの戯れ言でした。
(執筆:まなしば)
【参考】
※1:厚生労働省「平成 26 年度雇用均等基本調査(速報版)」
※2:厚生労働省「ハローワーク」
※3:厚生労働省「イクメンプロジェクト」
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