元日本テレビニュースキャスターで、現在は多くのメディアでコメンテーターを務める岸田雪子氏が、いじめ、虐待、子育て、介護など、親子間コミュニケーションを始めとする、身近な悩みや課題を取り上げる新連載「岸田雪子のBloom Room(ブルームルーム)」。親子の笑顔の“つぼみ”を花開かせる小部屋です。今回は、休校明けの “学校と子どもたちへのサポート“ について考えてみたいと思います。
学校が再開してしばらく経ったある夕方、我が家で「ぞうきん事件」が勃発しました。リビングルームの床に、無造作に投げ捨てられた、濡れた、怪しげなぞうきんを発見した私。よく見ると、今朝息子(中1)が学校に持っていたもののようです。息子に尋ねると「机とか椅子のアルコール消毒を自分でやったやつ」とのこと。あ、消毒って自分でやっているんだね、と思いつつ、おそるおそる彼のリュックの中を見ると、教科書が濡れてびちょぶちょ状態。消毒使用済みのぞうきんを、そのままリュックに投げ込んで帰ってきたようで…。これじゃあウイルスをふき取った意味がないんだよ、使用済みのぞうきんを入れる袋を持っていこうね、と話して聞かせたのでした。大人の常識は子どものヒジョーシキだったりしますが、コロナ常識を子ども(反抗期)に共有してもらうのはなかなかタイヘンです。
■ “消毒問題” の切り札にも?「人材バンク」の時給は
というわけで、子どもたちも自分でやっている「学校内の消毒」というのは、今、現場の大きな課題です。ある公立小学校の校長先生に聞いたところ、「辞書や、体育館のボールといった備品を毎日ひとつひとつ手作業で消毒している」とのこと。「消毒液は次亜塩素酸ナトリウムを使うので、あとから2度拭きも必要なんです」と大変なご苦労です。学習の遅れを取り戻す作業と、消毒作業の両立に追われる日々に、先生方からは悲鳴のような声も聞かれます。
そんな学校現場のサポートに、と創設された「学校・子ども応援サポーター人材バンク」をご存知でしょうか。「8万人の元教師などを募集する」、というニュースを耳にされた方も多いかと思いますが、実は必要とされているのは「元教師」だけではありません。
文科省のホームページを覗いてみると、「消毒」などの事務作業や、子どもたちの「見守り」など、先生方のサポートも募集の対象です。ICTが得意な方であれば、オンライン授業の準備を手伝うこともできますし、地域や保護者の方が、ご自分の仕事のことを子どもたちに話して聞かせることで、立派な「キャリア教育の授業」も成立するのです。
もちろん学習サポートとして「教員免許は持っているけれど教師は辞めている」という方や、「塾の先生方」が実際に授業を行うという事例も多くあるそうです。政府の事業ですから報酬もアリです。地域によって異なるものの、学習指導なら時給2,780円が上限、学習以外のサポートなら時給1,000円が上限だそうです。興味のある方は、文科省のホームページから登録フォームに進んでみてください。活動したい地域や、希望の仕事などを入力すれば、該当する自治体から直接連絡が来て、面接⇒採用へと進む仕組みになっています。
■「休校中の恩返し」「役に立ちたい」の声
ある学校が募集した消毒作業に参加した保護者の方の中には、「休校中にプリント作りなど尽力くださった先生方に恩返ししたかった」という方や、「何でもいいから何か役に立てることを探していた」という声も聞かれていました。
実は、こうして学校にみんなが「参加」することは、「学校を地域に開く」という重要な意味も持っています。学校を地域に開くことで、子どもたちを見守る「大人の目」を増やすことになり、いじめや虐待に苦しむ子どもの存在に気付いたり、支えたりすることにもつながるからです。
「子育て」を家庭だけでなく、学校だけでもなく、地域社会全体で助け合って担っていく。そんな未来の「開かれた学校のカタチ」につながるきっかけを、このコロナ禍で見つけることができれば思います。