コロナ禍のこの大変な時期だからこそ、人と人のつながりがより重要になります。
コミュニケーションの取り方が以前に比べて制約されているため、「聴く」ということの大切さを考えてもらいたいのです。
「聴く」ことは、自発的な行為であることは言うまでもありません。
聴くためには集中力が必要で、相手に共感する能力も大切です。
相手の状況や気持ち、考えを想像する能力が必要であり、さらに相手の感情に流されず、自分を客観視する冷静さも求められます。
「聴く」ためには、聴く側の積極的な努力が必要であり、「聞く」との違いはこの点にあるのです。
また、話を聴くことで、相手のメンタルにとても良い事が起こります。
徹底的に話を聴くことは、相手を最大限尊重する態度であり、相手の尊厳を高めます。
そして、尊厳を取り戻すことによって、相手の自己解決能力が高まるのです。
精神科医やカウンセラーによる面接では、聴くことに徹して少ししか話をしないことも、珍しくありません。
例えば、こんな話があります。
ある著名な心理カウンセラーは、泣きながら悩みを訴えていた女性に対し、ずっと黙って話を聴いていました(傾聴)。
そして、「ですよね」とたったひと言だけ口にしたのです。
その瞬間、その女性は泣くのをやめて、笑顔で帰って行きました。
「いかに良い聴き方ができるか」の方が、「いかにためになる話をできるか」より大切である証拠でしょう。
では、良い聴き方とはどういうものなのでしょうか。
それは、ただ聴き入ることです。
こちらの立場や都合で話を聞き出すのではなく、ひたすら聴き入ることです。
相手が、聞き出されたと感じることではなく、聴き入ってもらったと感じることが何よりも大切です。
なぜなら、話に聴き入ってくれた人の意見をないがしろにしようと思う人は少ないからです。
また、相手は話を聴いてもらって、自分の気持ちと考えを整理したいと思っているので、無理に自分の意見を押しつけようとすれば必ず抵抗を生みます。
したがって、説得、批判、解釈などは控える方が賢明でしょう。
さらに、原因を何度も追究することはやめましょう。
スポーツの世界では、どんな競技でも試合後にはビデオを観ます。
そして、監督やコーチ、がミスをした選手に「何でこんなこと(プレー)をしたんだ」と原因を訊きます。
1回は反省を促すために必要ですが、何度も何度も「何でだ?」と訊いてはいけません。
反省どころか、そのプレーが脳に刷り込まれ、また同じミスを犯してしまいます。
さらに、そのことによって追い込まれた選手は、監督やコーチの言うことを聞かなくなってしまいます。
「聴く」ことは難しいですよね。しかし、良い聴き方ほど心強い“武器”はありません。ぜひともマスターしてください。