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F判定だった私が東大に現役合格できた記憶法

30年前、“勉強本”は皆無でした

『ビリギャル』こと、『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』(坪田信貴著 KADOKAWA)が35万部を超えるベストセラーになっていますが、いまや試験勉強をはじめとする”勉強本”は一つのジャンルとして定着しています。

私が大学受験した30年前は勉強法の本は数少なく、勉強法なるものを意識して大学受験している人は少なかったと思います。せいぜい、「歴史は山川(出版社)の教科書がいい」とか「東大狙うなら『大学への数学』をやらないと」など、参考書に関する情報が飛び交っているぐらいでした。

私自身、今でこそ、『速読勉強術』や『合格(ウカ)る技術』、『「1分スピード記憶」勉強法』をはじめ、たくさんの“勉強本”を出していますが、大学受験のときは、勉強法なるものがあることも知らず、とにかくがむしゃらに試験勉強をしていました。

ただ、後から当時の自分を振り返ってみると、結果的にかなり効率的な「勉強法」を行っていたことに気づきました。そして、その体験が、その後、速読法や記憶術を学ぶなかで、私独自の勉強法(高速大量回転法やテキストまるごと記憶法)をまとめる土台にもなっています。

今回は、私が東京大学に現役合格したときの「勉強法」のうち、特に世界史と日本史に絞って、そこで行っていた「記憶法」をご紹介します。

■新聞配達しながらの私の勉強法とは?

かの『ビリギャル』が通っていたのは進学校で、しかも高2の夏から塾にいっていたそうですが、私は進学校に通っていたものの、彼女と違って塾にも予備校にも行っていませんでした。

というのも、当時、父が病気で入院していて生活がかなり苦しかったからです。高1から奨学金をもらってなんとか通学を続けている状況で、高2の終わりごろからは新聞配達のバイトも始めていました。

そんなわけで、お金のかかる模擬試験もなかなか受けられず、初めて受けたのは高3の夏でした。しかし、その結果は、最低の“F判定”(要志望校変更)。先生と親との進路面談でも、担任の先生からは「東大は絶対無理だからやめておけ」と言われました。

しかし、先生への反発心もあり、自分としては「絶対に東大に合格してやる!」と猛勉強を始めたのです。とはいえ、お金がないので塾や予備校で勉強するという選択肢はありません。そこで私がとった勉強法は驚くほどシンプルなものでした。

それは「教科書を毎日読む」。世界史は学校の授業があったので、そこで使っていた教科書を、この1冊に絞ってとにかく毎日読んだのです。日本史は学校の授業を取っていなかったので、新書版の『試験に出る日本史』(五十嵐和敏著 青春出版社)という参考書を買い、この1冊に絞ってひたすら毎日読んでいました。

ほかに選択肢がない中で行ったこの「勉強法」が、実は効率的な勉強法であり、記憶法でもあったのです。

■たくさん参考書・問題集を買えないことがプラス効果に

なぜ、「教科書を毎日読む」というのが効率的な勉強法、記憶法なのか? ポイントは2つあります。

まず1つは、勉強する対象が1冊に絞られていたので、「大量の繰り返し」ができたからです。あれこれ参考書や問題集を買って、それにも取り組んでいると、どうしても1冊あたりの繰り返し回数は減ります。1冊しかないわけですから、単純に繰り返し回数が増えたのです。

また、塾・予備校に行っていない分、学校が終わったらすぐに勉強できますから、朝に新聞配達していたとはいえ、実質的な勉強時間はかなりあり、それも繰り返し回数を増やすことに役立ったのです。

毎日繰り返し読んでいると、少しずつでも理解し、記憶していきます。理解・記憶している部分が増えると、読むスピードがどんどん速くなってきます。それがさらに繰り返しの回数を増やすという、いい循環になって、覚えるスピードにも加速がついていったのです。

2つめは、同じ本を毎日繰り返し読むことで、本をそのまま「まるごと」覚えられたからです。「まるごと覚えられた」というのは、「このページの次はあのことが書いてあったなあ」とか、「あのページには地図があって、その下に○○の説明があった」というように、頭のなかで本を思い浮かべられるようになったということです。

「え? そんなことができるの?」と思うかもしれませんが、別に不思議でもなんでもありません。あなたも、毎日通っている駅やバス停までの道のりを思い浮かべることができるでしょう。それと同じです。これも、1冊に絞って毎日読んでいるからこそ、できたことなのです。

■気が付けば、新聞配達・通学時間も勉強時間に

頭の中に本を思い浮かべられるようになると、机に向かわずとも、手もとに教科書や参考書がなくても、いつでもどこでも勉強ができるようになります。実際、私は新聞配達しているときも、学校へ自転車で通っているときも、世界史の教科書や日本史の参考書を思い出して勉強するようになっていきました。

そうなると繰り返しの回数がまたさらに増えます。また、手もとに本がない中で思い出そうとすることは、本当にわかっているか、覚えているかをチェックする格好のテストの機会になります。このように、お金がないから仕方なく取った勉強法が、結果的にはとても効率的な勉強法、記憶法になっていたのです。

ただ当時、自分としてはこれが「勉強法」だとも気づいていませんでした。そのことに気づいたのは、それから15年以上も経ってからでした。

速読法や記憶術を学び、数多くの資格試験やビジネススクール受験でそれらを実践検証するなかで、改めて大学受験のときの勉強が、効率的な「勉強法」であり「記憶法」であることに気づいたのです。

今、私が”勉強本”でお伝えしている

・速読法を活用して楽に「大量の繰り返し」ができる「高速大量回転法」
・「本の形」を意識的に活用して記憶する「テキストまるごと記憶法」

は、おおもとをたどれば、この私の大学受験の体験に行き着くのです。

30年前に比べれば、大学受験の参考書、問題集の数も増え、勉強法も含め、試験勉強に関する情報は何十倍、何百倍にもなっています。今は「教科書を毎日読む」なんていうシンプルで地道な勉強を続けるのは、難しい環境でしょう。

情報に振り回され、肝心の勉強がおろそかにならないためにも、30年前に私が行っていた勉強をぜひ参考にしてください。

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