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辞典によって漢字の画数が違う理由

画数の数え方は決まっていない

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Q. 名字にある「渕」の字が辞典では11画ですが、ある鑑定士に、本来は淵の字なので12画だと言われました。どちらが正しいのですか?

A. ご存知のように漢字は同じ字でも何通りもの書き方があり、そのうちの一つ、たとえば「淵」を正字と決めた場合は、そのほかの書き方は俗字と呼ばれます。これは正しいか間違いかという区別ではないのですが、新聞や書物では原則として正字が使われます。

ご質問は、辞典と占いを比較したような話になっていますが、これは別のことがらとして区別したほうがいいでしょう。まず名づけの際に画数が問題になるのは、占いに従って名づけをする場合です。画数を正字で数えるか、旧字で数えるか、俗字でも日頃使っている字で数えるか、誤字であっても戸籍の字を基準にするか、占いの流派によって占い方がまちまちになります。占いはどれを正しいとは決められませんので、占いに従うならご自分で流派を適当に決めるしかありません。

■辞典によって画数が違うこともある

占いの話とは別に、辞典の話にうつりますが、専門家が作った漢和辞典でさえも、同じ字が辞典によって画数が違うことがあります。

たとえば「臣」という字を6画とする辞典と、7画とする辞典があります。それは人による書き方のクセの違いによるもので、どちらを正しいと決められることではありませんが、それによって臣を含む「臥」「堅」「樫」「蔵」「腎」「蔵」などの字もすべて画数が違ってくるわけです。

ただ、少なくとも同じ辞典の中では数える方法は一貫してほしいものです。たとえば「此」の字を6画としながら、「木」をつけた「柴」の字を9画とする、というのでは矛盾します。「免」の字は、同じ楷書で微妙に書き方の違う字が2種類あり、それが7画と8画の違いになります。7画の字のほうは活字に変換できません。「免」に「日」をつけた「晩」や、力をつけた「勉」の字も2種類になり、一方は常用漢字に入れられ、もう一方は人名用漢字に入れられ、画数も違っているのです。

最近は「勉」という名前はあまりつけられませんが、ほとんど見分けのつかない字が2種類あり、「どちらも名前に使えます」と言われてもかえって紛らわしく、混乱してしまうでしょう。

■本来、漢字には画数など無かった

根本的な話をするならば、そもそも漢字には決まった画数というのは無いのです。漢字はもとは絵から変化したもので、画数を数えながら絵を描く人などいませんし、篆書、行書、草書、隷書などの字体で書いても、画数など数えようはありません。漢字に画数という考えが出たのは、楷書体が広まってからです。

私たちは辞典を開けば画数が書いてあるので、「漢字には画数がある」と考え勝ちです。ただ画数というのは辞典を作る必要から決められたもので、話が逆なのです。ですから今でも辞典によって画数の決め方に違いが出るのはむしろ当然のことでもあるのです。(執筆:牧野くにお)

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