時事

子どもの貧困率が過去最高の16.3%に。改善策は?

■「子どもの貧困」は相対的なもの

平成24年の子どもの貧困率は16.3%と、過去最高を記録しました(厚生労働省「国民生活基礎調査」より)。法律も作られて施行されたものの、改善につながるのでしょうか。

「子どもの貧困」と言われても、なかなかピンとこない人は少なくないでしょう。周囲を見回しても、ストリートチルドレンのような姿はどこにもありません。それもそのはず、国ごとの「相対的」なものだからです。

子どもの貧困とは「その国での“当たり前の生活”が送れない」状態を指します。貧困のラインの線引きとしては、世帯の1人当たり可処分所得の中央値(少ない順に並べたときの真ん中の値)の半分が基準です。この基準以下の家庭で暮らす子どもが該当します。

子どもの貧困率は、先進国ではアメリカが21.2%とダントツに高いものの、日本も高く、平成24年は過去最高の16.3%をマーク。イギリスやドイツが9%台と低いのを見ても、日本が高いことがわかります。日本の子どもの6人に1人が相対的貧困の状態にあり、その数は300万人とも言われています。

■子どもの貧困は目に見えにくく、気づかれにくい

日本での子どもの貧困は、前述のように飢えや、家がないといったことではなく、すぐそばにいても気づきにくいのが特徴です。想像すると、こんな子たちなのかもしれません。

「朝ごはんを食べずに登校し、歯並びが悪く、虫歯も多い。入浴や着替えが毎日でないときもある」

「習い事やスポーツ、部活などもあまりせず、他の子が持っているようなゲームなどもなく、話題に入れないことも。修学旅行も行かない」

「親の収入が不安定で、不安やストレスの中で育ってきたためか、自己肯定感が持てず、何でもすぐにあきらめてしまう」

「塾に行くお金がなく、成績が悪くても改善できない。親も忙しく勉強を見てやれない。成績が悪いのは頭が悪いからだと思い込み、自信が持てない」

「中卒で働く子や働きながら定時制高校に通う子もいる。大学進学率は低い」

周りがみんな貧しかった時代には何でもなくても、生活水準が上がっている中では、みんなと同じにできないことは辛いことでもあります。

■子どもの貧困が増えてきた2つの理由

子どもの貧困は、育てる親の低所得や生活困窮が主な原因といわれています。親が貧困状態にあるため、子どもも貧しくならざるをえないのです。

子どもの貧困が増えてきた理由は主に2つ挙げられます。

1つは、90年代後半以降に派遣社員など非正規雇用が増え、経済的に不安定になったこと。不景気と相まって、大きな要因として指摘されています。

もう1つは、ひとり親世帯、特に収入の低い母子世帯が増えたことが挙げられます。平成23年時点の母子世帯は推計124万世帯あり、就労収入は平均約181万円。母子世帯の子どもの貧困率は54.6%と先進国では最悪の状態です。2人以上大人がいる世帯での貧困率が12.4%であることと比べると、異常な状態だということがわかります。

■国の対策はどうなっている?

子どもの貧困の問題には政府も力を入れています。関連する法律や制度も整備されつつあります。

●子どもの貧困対策法(子どもの貧困問題に関する法律)
●生活困窮者自立支援法(生活困窮者の自立をサポート)
●子ども・子育て支援制度(認定こども園など、待機児童を解消する)

また、2015年の動きとしては、次のようなものがあります。

高校生向け給付型奨学金の拡充
●ひとり親家庭の生活・就労を支援する専門員を設ける
●民間資金を核とする基金創設「子供の未来応援国民運動」(学習や生活の支援団体を助成)

とくに、国と自治体、経済界、労働界が協力して創設された「子供の未来応援国民運動」は要注目で、個人的にも期待している項目です。

■親も貧困に陥らない・抜け出す努力を

改善のための様々なメニューが揃いつつあり、昔に比べ、少しづつ親の負担は軽くなってきているように思います。

本音では、児童扶養手当の所得制限の緩和や高校の給付型奨学金の充実、大学の給付型奨学金の創設など、まだまだ期待したいところなのですが、財源の問題も深刻……。

なので、我々親の側も知恵を絞って、家計力をつける、収入を上げるための努力をするなど、貧困に陥らない、陥っても抜け出す努力が必要なのだと思います。

(執筆:豊田 眞弓)

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