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「おいでやす」と「おこしやす」の違い

「おいでやす」「おこしやす」――京都や大阪を訪れたとき、この柔らかな方言に迎える側の親しみを感じて、ほっと心があたたまることがあります。ところで、この「おいでやす」と「おこしやす」、どのように使い分けるかご存知でしょうか。

■一見さんに「おこしやす」は使わない

「おいでやす」と「おこしやす」。おおまかな意味は同じ「いらっしゃいませ」ですが、微妙に成り立ちが違います。「おいでやす」とは、お出(い)でになる――出てくる、つまり“急に現れる”という意味。お店にふらっとやってきた一見さんに対して、どうぞお入りください、と迎え入れるための言葉です。

一方の「おこしやす」は、お越しになる、という意味。店を目指して、遠方からわざわざ来てくれた常連さん、予約をしてきてくれたお客さんに対して、ようこそお越しくださいました、と感謝している言葉です。

厨房で忙しく料理を作っている板前さんは、店にやってきた人への挨拶が「おいでやす」だったら、飛び込みの客なのでおすすめの料理を出そうと、「おこしやす」が聞こえたら、この時間の予約客は○○さんだからお好きなあの料理を出そう、という様に、すばやく把握することができるのです。

同じ「いらっしゃいませ」でも具体的な状況に合わせて使い分ける。おもてなしの奥深さを感じられる言葉ですね。

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