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“塩”なのに“減塩”ってどういうこと? 「減塩しお」を上手に使うポイント

高血圧になりやすい日本人には、「減塩」が大切だと叫ばれて久しい昨今。食品売り場の食塩の棚には通常の「食塩」や「粗塩」などと一緒に「減塩しお」が並んでいます。「“塩”なのに“減塩“ってどういうこと?」と思っている人も少なくないと思います。そこで今日は「減塩しお」の仕組みと上手な減塩の仕方をご紹介します。

■「減塩しお」の仕組み

「“塩”なのに、“減塩”とはこれいかに?」不思議に思っている人も多いのではないでしょうか。ヒントは、中学校の理科の時間に習う「塩化ナトリウム」にあります。

通常、わたしたちが知っている「食塩」は、99%が塩化ナトリウムでできています。なぜ100%ではないかというと、海水からつくることが多いので、どうしても他のミネラル分等が1%分くらい残ってしまうのが理由です。この残留ミネラル等の味が粗塩の味を決めているといわれています。

「減塩しお」というからには、この塩化ナトリウムの比率を減らしているのでしょうか? しかし、そうなるとナトリウム以外のミネラル分の比率ばかり上がってしまい、本来の塩の味ではない雑味ばかりが強いものになってしまいます。

では、どのように減塩しているかというと、実は塩化ナトリウムと同じような塩味を感じる「塩化カリウム」を加えることで減塩をしているのです。

■なぜ「塩化カリウム」に置き換えるのか?

「塩」という漢字には2つの読み方があります。「しお」と読む場合と「えん」と読む場合です。

「しお」と読む場合は、調理用の「食塩」を指すことが一般的。「そこの“しお”をとってくれる?」などと使われたりします。

「えん」と読むのは化学用語として。「塩(えん)」は陽イオン・陰イオンが結合したもので、体内に多く含まれる陽イオンの代表例がナトリウム。そのため、人間はナトリウム補給のために食塩を摂る必要があるのです。ほかにカリウム、マグネシウムなどがあります。余談ですが、熱中症の症状が出てしまったときに必要な「塩分(えんぶん)」は正確には後者の「塩(えん)」です。

テレビ等では「高血圧症の人は食塩の摂りすぎに気をつけてください」と言われています。ナトリウムが血圧に悪影響を与えると考えられているためです。つまり、「高血圧症の人は“ナトリウム”を摂りすぎないように注意する必要がある」というのが正確な表現になります。

ナトリウム自体は植物性食品、動物性食品問わず、さまざまな食品に含まれています。ただ、食品に含まれるナトリウム量を心配するよりは、醤油や味噌などの調味料に含まれる食塩に気をつければ、高血圧に対する効果が十分に出ることから「食塩の摂りすぎに注意しましょう」と報道されているのです。

そこで、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた「減塩しお」が登場しました。塩化カリウムは若干の苦味はあるものの、同じように塩味を感じるためこのような置き換えができたのです。

理由が分かったら、次に知りたいのは塩化カリウムであれば安全なのか?ということだと思います。

■「塩化カリウム」は安全なの?

体内では、ナトリウムは細胞の中、カリウムは細胞の外に存在します。この濃度関係が崩れると、体内の水分の動きに異変が起きてむくみが生じたり、高血圧の原因になったり、体温調節が上手くいかなくなるなどの原因になります。

特に高血圧はカリウム不足が原因となる場合もあり、高血圧患者の食事療法は、食塩摂取量を減らすこととともに、カリウムの摂取を増やすよう指導されることもあります。

しかし、そんなカリウムも摂りすぎれば害になります。不整脈等を起こし、下手をすると命に関わる場合もあります。自然の食品から摂取する分には過剰症は起こりませんが、サプリメントで摂取した場合には、カリウムの過剰症には十分注意が必要です。同様に、減塩しおもカリウムの含有量が高いので、注意が必要です。

また、腎臓が悪い人には、減塩しおは禁忌です。ナトリウムもカリウムも尿に溶けて排出されます。血液をろ過して尿を作る器官である腎臓が悪いと、ろ過すべき血液のナトリウムやカリウムの濃度が高い場合に負担が大きくなってしまいます。そのため、腎臓病の食事療法ではナトリウムとカリウムは制限するよう指導されます。

血圧が高いために減塩しおの利用を考えている人は、「減塩になるから」と安易に減塩しおに手を出さず、まずは病院を受診し、腎臓に負担がかかっていないことを確かめてから使うことをオススメします。

■減塩商品を使わずに減塩する方法

減塩しおは市販されているものをテーブル食塩の代わりに使うだけなので、「まずやってみよう」という場合には、お手軽で簡単です。しかし、減塩しおは若干の苦味があり、コスト的にも安いものではないので、長く続けようとすると辛くなってしまう人もいると思います。そこで、減塩商品を使わずに減塩する方法をご紹介します。

・酢、かんきつ類の酸味を利用する
・出汁を多用する
・薬味を利用する
・香辛料を使う

ポイントは「塩味」以外の味や香りを使って、おいしいと感じるように調理することです。工夫次第で美味しく身体にいい食事ができます。身体のためにと美味しいものをガマンするのではなく、自分の身体に合った工夫をしましょう。

(平井 千里)

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