忙しいときに限って「聞いて!聞いて!」と、まとわりついてくる子ども。「手が離せないから、あとでね」を繰り返しているうちに、気付けば子どもは夢の中……。子どもの寝顔を見ながら「しまった。またやっちゃった」「この子、いったい何を聞いてほしかったんだろう?」と思ってしまうことはありませんか?
■ついついやってしまう…「あとで聞く聞く詐欺」
バタバタと夕食を作っていたら「ねえ、聞いて!」「ちょっとこっち来て!」「これってどういうこと?」「どうやったらいいのかわかんない~」矢継ぎ早に子どもから放たれる、かまって攻撃。
対する忙しい親たちは、「あとでね」を繰り返したり、「上の空で返事」をしたりといった対応をしてしまうことが多いのではないでしょうか。
「ちょっと待って!」
「今、手が離せないからあとでね!」
「これがこうでね」「ふんふん」
「ねえ、聞いてる?」「聞いてるよ、それで?」
「じゃあ、さっき何言ったか言ってみて」「えーっと……」
「聞いてないじゃん!」「ごめん、あとで聞くね」
……その時は本当に思っているのです。あとで落ち着いたらじっくり話を聞いてあげようと。
でも、時間は容赦なく流れ、お風呂だ、歯みがきだ、ああもうこんな時間! 寝なさい!と、気がつけば子どもは夢の中。子どもの寝顔を見ながら「あ、しまった。またやっちゃった」「この子、いったい何を聞いてほしかったんだろう?」と思ってしまう。
「あとで聞く聞く詐欺」、やっちゃっていますよね……。
■生活は、大人の時間で動いている
私たち大人は、1日をいかに効率よく回していくかに重点を置きがちです。仕事をしている人は、家事を「タスク」として処理しようとする傾向も強いかもしれません。
しかし、子育て期は、子どもの突然の発熱やケガなど、予測できないことが盛りだくさん。そのために、平穏な日には「なるべく早く、家事を終わらせて、子どもとの時間を持ちたい」なんて思っています。「たまには、自分の時間もほしい」とも思います。「今ココで中断すれば、余計に時間がかかる」という判断から、言ってしまうわけです。「あとにして」。
「子ども中心の生活をしています」なんて言いながら、実は大人の都合に子どもが合わせていることのほうが多いのかもしれませんね。もちろんそれは一概に悪いこととは言えません。なんでも子どもに合わせた生活が、子どもの成長にとって良いことだとも思えません。でも、「聞いて聞いて」と言ってくるのは、子どもの感情が大きく揺れることがあった時。しっかり受け止めて共感することで、子どもの心は育っていきます。「子どもの話、最近あまり聞いてあげていないな……」と思ったら、少し工夫をしてみましょう。
■いったん手を止めて、聞く
子どもの「聞いて聞いて」が始まったら、一度その場で家事や仕事の手を止めて「聞く態勢」をつくりましょう。子どもの目を見て、少し身を乗り出して、あいづちを打ちながら聞きましょう。しっかり聞いてくれていると子どもが感じると、思っていたより時間はかからないはずです。「適当に聞いているから、長引く」のです。
子どもの話は年齢が低いほど、要領を得ません。話があっちこっちに飛ぶし、何が言いたいのかもよくわかりません。でも、いじめなどの問題が起こっていない限り、全体像を把握する必要などないのです。
わからないなりに、「へー、そうなんだ!」「それは面白いね!」と表情豊かに反応を返したり「その時、どんな気持ちだった?」と子どもの気持ちを聞いて共感したりしていると、案外早く満足するようです。子どもは、話の内容を伝えたいというよりも、「親が自分にちゃんと向き合ってくれている」と感じたいのかもしれませんね。
ただ、「さあ、話せ!」と迫られても子どもも話しにくいでしょうし、親がソワソワしたり、別のことに気を取られていることは、子どもは敏感に感じ取ります。「あとでね」と言ってしまうことが2回続いたら、今度は何をしていたとしてもその場で手を止めて聞く、など、親の方で意識しておくのもいいですね。
■話を膨らませず、アウトラインだけつかむ
時間がない時は、子どもの話に質問を投げかけたりして「親の方が話を膨らませない」ことを意識しましょう。「あとで聞く聞く詐欺」をしてしまうのは、「どうせなら、じっくり聞いてあげたい」という親の思いがあるからではないでしょうか。でも、子どもが「今」聞いてほしいという気持ちも、受け止めてあげたいものですね。いつもいつもは難しいとしても。
詳しく聞きたいことは、あとで「話を蒸し返して」子どもにきいてみましょう。そのためにも、子どもが何を話したがっているのかのアウトラインだけはつかみましょう。手が離せない時は「このこと、もうちょっと聞きたいけれど、今は時間がないから、続きはあとで聞かせてくれる?」と言っておけば、自分なりに話したいことをまとめておいてくれるでしょう。
小学生にもなると、学校でのことをたずねても素っ気ない反応しか返ってこなくなりがち。「ねえねえ、聞いて」は、子どもが何を考えて生活しているのかを知るチャンスだと思って対応しましょう。
■その子だけの時間をつくる
きょうだい児がいて「わたしも! ぼくも!」と言ってくる場合もあるでしょう。それらすべてに今すぐ対応できないことも多いですよね。そんな時は、少し意識して「その子との特別な時間」を作れないか、考えてみましょう。子どもの年齢にもよるでしょうが、月水金は○○ちゃんと、火木土は▲▲ちゃんとお風呂に入る、とか、一緒にお散歩をする、といったことでもいいかもしれません。ほんの5分でいいのです。パパやママを「ひとりじめできる時間」を、それぞれの子が持てるよう、意識してみましょう。
(福田 由紀子)
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