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ユースか部活か・・・日本代表の出身はどちらが多い?

6+5+12で23──さて、何を表す数字かお分かりだろうか。2018ロシアW杯予選に挑んでいる日本代表選手たちが、どのような経歴でプロサッカー選手になったのかを分類したものだ。国内のトップに君臨する彼らの足跡から、見えてくるものとは?

■下部組織出身選手は多いのか?

プロ野球のドラフト会議でプロチームに指名されるのは、高校と大学の卒業を控えた学生、社会人野球でプレーするノンプロの選手がほぼすべてを占めている。

Jリーグは違う。アカデミーと呼ばれる下部組織の保有がチームに義務づけられていることもあり、新入団選手にはユース(高校生)からの昇格が含まれている。

それでは、現在の日本代表選手は、どのような道を辿ってプロサッカー選手になり、日本を代表する存在となっていったのか。11月12日にシンガポールと、同17日にカンボジアとロシアW杯アジア2次予選を戦う日本代表23人の経歴を整理してみる。

ユースチームからトップチームに昇格した選手:12人
高校卒業後にプロとなった選手:6人
大学卒業後にプロとなった選手:5人

もっとも多いのは、ユースチームからトップチームへの昇格だった。香川真司(26歳・ドルトムント/ドイツ)や宇佐美貴史(23歳・ガンバ大阪)のように、高校卒業を待たずにJリーグの公式戦に出場した選手もいる。実力を認められれば年齢に関わらず上のカテゴリーで練習や試合をできるのは、アカデミーが持つ最大の強みだろう。

とはいえ、高校と大学を経てプロになり、日本代表になった選手も合計で11人を数える。合計すればユース出身とほぼ同じだ。高卒には長谷部誠(31歳・フランクフルト/ドイツ)、本田圭佑(29歳・ACミラン/イタリア)、岡崎慎司(29歳・レスター/イングランド)の海外組が名を連ね、大卒にも長友佑都(29歳・インテル/イタリア)、武藤嘉紀(23歳・マインツ/ドイツ)の海外組がいる(長友と武藤は大学卒業を待たずに、いずれもFC東京でプロとなったが)。

今回は日本代表に選ばれていないものの、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の構想に含まれる選手にも、高卒や大卒の選手は少なくない。ドイツ・ブンデスリーガのシャルケに在籍する内田篤人(27歳)、Jリーグの名門・鹿島アントラーズで主軸を担う柴崎岳(23歳)らは、高校からプロ入りした選手だ。2010年と14年のW杯で正GKを務めた川島永嗣(32歳)、Jリーグ屈指の左サイドバックと言われる太田宏介(28歳・FC東京)、ドイツの1.FCケルンでプレーする大迫勇也(25歳)らも、高校卒業後にプロの世界へ飛び込んだ。

また、Jリーグで2年連続2ケタ得点をマークしている永井謙佑(26歳)、移籍1年目の浦和レッズでブレイクした武藤雄樹(27歳)は、大学からプロへ進んだ選手たちである。彼らもまた、ハリルホジッチ監督の構想に入っている。

■武藤嘉紀の成功例

さらにデータを提示したい。2015年のシーズン開幕前時点で、新たにプロ選手となった経歴は以下のとおりである(Jリーグクラブ同士の移籍は除く)。

ユースチームからトップチームに昇格した選手:18人
高校卒業後にプロとなった選手:9人
大学卒業後にプロとなった選手:13人

高校と大学を卒業した選手の合計が、ユースから昇格した選手を上回る。では、すでに来春の入団が内定している選手の内訳はどうだろうか。

ユースチームからトップチームへの昇格が内定した選手:11人
高校卒業後のプロ入りが内定した選手:12人
大学卒業後のプロ入りが内定した選手:14人
(2015年11月9日現在に内定しているもの)

ここでも、高校と大学の卒業予定選手が、ユースからの昇格内定選手を上回る。

新戦力の補強が高卒選手に偏ると、同年代の選手が増えてしまう。チームの年齢バランスを考慮すると、ユース、高卒、大卒をバランスよく獲得していく必要が生じる。それと同時に、近年は大卒選手に対する需要が増加傾向にある。

少数精鋭と言っていいアカデミーと、100人規模の大所帯にもなる高校や大学のサッカー部は、それぞれに長所がある。サッカー選手としてはもちろん人間教育にも視野を広げたときに、上下関係のある“部活”がクローズアップされてくるケースは多い。高卒選手に比べて身体が出来上がっている大卒選手には、即戦力としての期待も高まる。

武藤嘉紀の経歴は、モデルケースになる。

中学、高校とFC東京の下部組織でサッカーを学び、高校3年時にはトップチームに登録された。高校卒業後の昇格をクラブ側から打診されたが、彼は慶應大学へ進学する。

大学サッカーで心身に磨きをかけた武藤は、卒業を待たずにFC東京とプロ契約を結ぶまでに成長する。Jリーグでプレーしたのは2014年と15年6月までの1年半だが、今夏からドイツ・ブンデスリーガのマインツへ移籍した。新天地でもレギュラーポジションをつかみ、すでに6ゴールをマークしている。

実働1年半の武藤が海外移籍を実現させたのは、ドイツ国内における日本人のブランド力にも理由がある。チームの一員として働ける協調性に優れ、監督の指示を忠実に遂行する日本人選手は、技術的水準の高さも掛け合わされ、ドイツ国内で優良銘柄として認知されている。武藤が所属するマインツでは、昨年まで岡崎慎司が得点源として活躍した。「日本人は戦力になる」という認識の高まりが、後に続く者のチャレンジを後押ししているのだ。もちろん、与えられたチャンスを生かした武藤の潜在能力も、評価されてしかるべきである。

Jリーグの新卒選手に話を戻そう。
アカデミーに入れたからといって、プロになれる保証はない。高校や大学でサッカーを続けることが、プロへの遠回りになるわけではない

アカデミー出身の選手はテクニックに見どころがあり、部活でサッカーをした選手は精神力と体力に優れる、とも言われるが、これはもう誤った認識だ。

プロになるだけでなく、プロとして成功を収める選手はみな、心技体を高いレベルで兼ね備える。ブレない心の持ち主だ。さらに加えて「知」という要素も満たす。目標から逆算した積み重ねができ、そのために考える力を持っているのだ。自らのバックボーンを言い訳にしない者が、アスリートとして大成できるのだろう。

(執筆:戸塚 啓)

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