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ワケあり物件専門家に聞く、こんな部屋は要注意!

一人暮らしへの第一歩となる部屋探し。実は、その中には“事故物件”と呼ばれるワケありの部屋が隠れていることがあるんです。どうしたら事故物件を見分けることができるのか、また事故物件に住むことにメリットやデメリットはあるのかなどを事故物件公示サイトを運営する大島てる氏に教えてもらいました。

■『大島てる』に聞く、事故物件の見分け方

新生活に向けて、一人暮らしの準備を始める人が増える時期です。一人暮らしスタートのための第一歩として始めるのが部屋探しですが、注意しなければならないことも多くあります。そのひとつとして挙げられるのが、借りようとする部屋が"事故物件"ではないかということ。


「事故物件の見分け方は? イラスト/オギリマ サホ

そもそも"事故物件"とは何か、またどうしたら事故物件を見分けられるのか、事故物件に住んだら、どうなるのかなど、これから部屋探しをする人が気になることを、事故物件公示サイトを運営する大島てる氏に教えてもらいました。

■"事故物件"って何?事故物件公示サイト『大島てる』って?

"事故物件"という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。いわゆるワケあり物件のこと。ただし、法律用語などではないため、厳密な定義はありません。

事故物件公示サイト『大島てる』は、2005年に開設され、日本全国及び海外の一部も含めた事故物件の住所や部屋番号、元入居者の死因等を知ることができます。まだ一度も見たことがない方には、一度今住んでいる場所やその周辺を調べてみると面白いですよ。実は「今住んでいる建物で、過去に事件や事故が起こっていた」「ごく近所で事件が起こっていた」なんてことがわかってしまうかもしれません。


事故物件公示サイト『大島てる』

ワケあり物件というと、すぐに思いつくのは殺人などの他殺や自殺があった物件。より広くイメージすると、欠陥住宅や、暴力団・反社会的な団体が住んでいる、心霊現象が起こるという噂がある物件などが挙げられます。人が住みたくない部屋というのは様々ありますが、このサイトでは、他殺(殺人や傷害致死など)や自殺、火災による死亡(放火や焼身自殺、失火を含む)、孤独死など、人の死にかかわる事件や事故が起こった部屋が掲載されています。

感じ方は人それぞれではありますが、以前誰かが亡くなっている部屋、事故や事件が起こった部屋に好んで住みたいと思う人は少ないもの。では、自分が住みたいと思う部屋が事故物件かどうか見分けるにはどうしたらいいのでしょうか。

■事故物件かどうかを見分けるポイントは?

事故物件公示サイト『大島てる』では随時情報が更新されていますが、ここに掲載されていない事故物件は他にも多数あると言われています。てる氏によると、次のようなポイントがみられる物件は気をつけた方がいいとのこと。

・家賃が相場より安い 
「その部屋に住むのに何らかの問題があって、借り手がつかなければ、家賃は安く設定されます。その街の相場より明らかに安い場合は、事故物件であることも可能性が高くなります」

・部屋の一部だけ、一部屋だけリフォームがされている 
「例えば床だけが新しいフローリングになっている場合は遺体の体液が床に染みこんでしまったため、またバスルームだけが最新設備になっている場合は火災があって焼けたため・・・など、事件や事故による痕跡を消すため、一部のみをリフォームすることも。また、同じ建物の他の部屋は古いままなのに、その部屋だけリフォームされている場合もあります」

・マンションやアパートなどの建物名を替えている 
「事件が起こって有名になってしまったことを風化させるために、建物の名前を替えている場合があります。テレビ等で大きく報道された物件の場合は、建物の色を塗り替えていることもあります」

・定期借家契約になっている
「定期借家契約とは、更新ができない契約の形態のこと。事故物件では契約期間を1~2年と短くし、その間は家賃を安くするケースがあります。ただし、その後貸し出す際には、事故物件であることを隠し、従来の高い家賃に戻して貸そうとする大家さんや不動産会社があるので、注意が必要です」

ちなみに、サイトを見ていると、事故物件が多く集まる地域があることに気づきます。遠方からの部屋探しでは、これから住む地域の治安等がわかりにくいですが、事故物件公示サイト『大島てる』を事前にチェックしておくことで、比較的安全な地域を選ぶヒントになります。

■住んだ部屋が事故物件だった! どうしたらいい?

部屋探しをしていると、「告知事項有り」という記載を見かけることがあります。この告知事項とは「契約前に伝えておくべき情報がある」ということ。自殺や殺人、火災などで人が死亡した心理的瑕疵(心理的な欠陥)がある部屋の場合、貸し主(大家)は借り主(入居者)に事前に告知する義務があります。

もし住んだ部屋が事故物件だったのに、事前に告知されていないのであれば、「大家や不動産会社にクレームを入れればいいです」。引越代や、部屋の契約にかかった費用(礼金、仲介手数料等)などを請求することができます。ただし、大家や不動産会社がその請求に素直に応じないことも考えられます。その場合は訴訟も視野に入れて動くことが必要です。

なお、注意しなければいけないのは、この告知義務には明確なルールがないということ。

「何人目まで、何年間、告知すればいいのかは、法令で定められているわけではありません。不動産業界では、事故後一人目の入居者には伝えようという流れになっており、伝えなければ告知義務違反として罰せられることもあります。ただし、二人目以降の入居者や、同じ建物内や隣室で事故があったとしても、それを告知する義務はないと考えている大家や不動産会社が多いです。親切な不動産会社であれば、サービスで教えてくれることもあるかもしれませんが・・・」

さらに難しいのが、どういった状況が心理的瑕疵にあたるかも明確なルールがないこと。サイトでは「他殺」「自殺」「火災による死亡」「孤独死」による事故物件が掲載されていますが、特に難しいのが孤独死の場合。

「例えば真夏で発見が遅れた場合、遺体が腐敗して悪臭がしたり、ウジが発生したりと、他殺よりも悲惨な状況になることもあります。しかし、こういった部屋が、心理的瑕疵物件として告知事項にあたるかどうかはケースバイケース。裁判で判断してもらうしかありません」

事故物件として確実に認められるのは、他殺や自殺、火災で人が亡くなった部屋で、事故後一人目の入居者であるということ。借りる側としては、何人目であっても、何年たっていようとも、告知してほしいところですが、以前は一人目にすら告知しないことが当たり前で、これでも少しずつ改善はされてきているところなのだとか。今後さらに安心して部屋探しができる流れに進むのを期待したいところです。

■家賃が安いならオトク? 住んでもいい事故物件ってある?

過去に人が亡くなっている部屋というのは、なんとなく気味が悪いもの。でも、「そんなことは気にしない。むしろ家賃が安いなら、その方がいい」という人もいるかもしれません。住んでも大丈夫な事故物件というのもあるのでしょうか。

「事故があったことをきちんと告知し、家賃を下げてくれるような正直で誠実な大家さんや不動産会社が扱う物件であれば、大丈夫です。同じ物件で事故が続くというのはゼロではないけれども、非常にレアなケース。事故物件だからって、また事故が起こったり、のろわれたりすることはないですよ」

事故物件に住みたいのであれば、「告知事項有り」の記載のある賃貸情報を探したり、不動産会社にその旨を伝えれば、紹介してもらえるそうです。

■事故物件に住むことで起こる怖いことって?

事故物件に住むと、幽霊が出たり、のろわれたり・・・とオカルト的な怖さを考えがちですが、そういったことだけを指しているわけではありません。てる氏曰く、「死んだ人間より、生きている人間の方が怖い」。その心は重要なことを隠したり、嘘をついたりするような人が、まともな人間であるはずがないから。不当な家賃を払わされるだけでなく、敷金を返してもらえないこともあります。本当に残酷なところでは、不動産会社の社員がその立場を利用して、合い鍵で女性の部屋に侵入し、暴行した上で殺人を犯すといったケースも過去にあったそうです。(参考記事『こんなに危ない「合鍵」の存在 』) 

「事故物件であることを明かすと、借り手がなかなか見つかりません。家賃を下げたり、ペット可にしたりと、これまでよりも入居審査が緩くなり、今まで禁止していたことを許可しなければならなくなる場合があります。それによって、以前は高級マンションだったのに、マナーや柄の悪かったりする人も住めるようになってしまうなど、住民のモラルが下がってしまうこともあるんです」

例えば以前はペット不可だったのに事故後は飼えるようになるなど勝手に規約が変更され、すでに住んでいた住民との間に不和が生じたりと、トラブルが起きやすい環境に変化していくことがあります。

事故物件に対する嫌悪感がないのであれば、「家賃が安くていい」とメリットを強く感じるかもしれませんが、その部屋はよくても、建物全体が安心して住めない状態になっている可能性もあります。また、そこに入居する自分自身がこれまで住んでいた人たちの暮らしを変化させる存在になりうることがあるということも意識しておいた方がいいのかもしれません。

■初めての一人暮らし、部屋探しで気をつけた方がいいことは?

初めての一人暮らし、部屋探しを始める人も多いと思います。部屋探しをする際の注意点を伺うと

「事故物件を隠蔽する大家、不動産会社は悪徳です」と一言。

「前の項目で告知義務について触れましたが、事故後一人目の入居者にその旨を告げなければ、その不動産会社は告知義務違反となります。しかし、その一人目に対してさえ知らんぷりをして、何事もなかったかのように通常通りの家賃で入居者を募集するという事例が多くあることに注意が必要です。ただ、孤独死のように事故の範疇に入るのかはっきりしない場合もありますし、不動産会社がそもそも告知義務について知らないという場合もあるので、なかなか難しいところはあるのですが・・・」

部屋探しの際には、事故物件かどうかを見分けるポイントを頭に入れながら下見をし、契約前にはサイトの情報もチェックしてください。


映画『残穢【ざんえ】 ―住んではいけない部屋―』とコラボ中の大島てる氏

■事故物件公示サイト運営・管理人・大島てる
事故物件公示サイト『大島てる』www.oshimaland.co.jp/を運営。
監修本『大島てるの絶対借りてはいけない物件』(主婦の友インフォス情報社)

現在公開中の映画『残穢【ざんえ】 ―住んではいけない部屋―』とコラボ中の大島てる氏。住人達に次々と事件や事故が起こる、いわゆるワケあり物件。その謎を解いていくと・・・気になる物語だけれど、部屋探しが怖くなってしまいそう!?

(執筆:河野 真希)

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