時事

初の全米オープン出場でベスト10、怪物・松山英樹の伝説はここから始まった

 アマチュア時代にマスターズに2度出場した松山英樹。満を持してプロ転向したのが、2013年の4月2日だった。日本ツアー開幕2戦目でプロ初勝利を挙げ、5月の全米オープン日本地区最終予選会で本戦出場権を圧倒的な力で勝ち取ると、弱冠21歳の若武者が世界への扉を開いた。

 迎えた初の世界最強決定戦・全米オープン。舞台のメリオンゴルフクラブは距離こそ短いが、狭く絞られたフェアウェイと長いラフ、雨と悪天候にも祟られ、世界のトッププレーヤーは大苦戦を強いられた。その中でも松山は非凡な才能を見せた。初日こそ荒天のため7ホールのみのプレーに終わったが、2日目に第1ラウンドの残りを消化し、1オーバー、16位タイでホールアウト。日本から来た若者が全米でも存在感を示した。

 しかし、松山でも全米オープンの洗礼を浴びることになる。続けて行われた第2ラウンドは、ティショットの精度を欠き、5オーバーのラウンド。通算6オーバーとして、首位とは7打差での決勝ラウンド進出となった。

「長い1日になるのが分かっていたのですが、集中力が切れてしまいました。ハードなセッティングでやるには精神力も必要ということですね」

 スコアこそ落としたが、大器の片りんを見せた。パッティングが思うように決まらなかったが、ティショットに成功したホールは得意のアイアンでバーディチャンスをつくり出した。気合を入れ直して臨んだ勝負の3日目も思うようなプレーができず、スコアを4つ落として通算10オーバー、39位タイまで後退。

「集中はしていたのですが、難しいセッティングの中でどんどん優勝争いのスコアと離れていって、気持ちの持ち方が難しかったです」

 しかし、失敗から巻き返す松山が翌日の最終ラウンドで世界を驚かす。難コース相手に6バーディ、3ボギーの3アンダーでラウンド。これは4日間を通しての大会ベストスコアタイ。通算7オーバーまでスコアを戻し、10位タイで、初のメジャートップ10入りを決めた。

「世界のトッププロが1日3アンダーしか出ていないので、その中で自分が3アンダーで回れたのはすごい自信になります。こいうプレーを続けたら勝てるんじゃないかと思いました。すごく勉強になりました。トップ10に入れてうれしいです」

そして最後に力強くいい切った。

「スタートラインに立てました」

怪物・松山英樹の快進撃がスタートした瞬間だった。

【松山英樹ストーリー】2013年からの軌跡(動画) >>

■米ツアー初優勝を経て乗り込んだ2度目の全米オープンは悔しい結果となった

大会2週前のザ・メモリアルトーナメントで悲願の米ツアー初優勝を果たした松山英樹。しかし、それは松山にとって単なる通過点でしかなかった。究極の目標はあくまでもメジャー制覇。その気持ちを強くさせて乗り込んだ舞台はパインハーストナンバー2。全米オープンの舞台から初めて深いラフが消えたコースだ。

「世界のトップ選手が照準を合わせてくる大会がメジャーです。世界で評価されるためには、メジャーで勝たないと意味がない」

 手綱を緩めることなく臨んだ2度目の全米オープンで松山は、幸先のいいスタートを切ることになる。初日は安定したゴルフで1アンダー、首位とは4打差の6位タイと絶好の滑り出しを見せた。前年は、日本ツアーでは史上初のルーキーイヤーでの賞金王に輝いた。主戦場をアメリカに移してからも順調に試合を重ねていた松山が、いよいよ4大メジャーのタイトルに近づいた。誰もが期待した。第2ラウンも我慢を重ねて、スコアを一つ落とすも、通算イーブンパーの14位タイに踏みとどまった。しかし、首位を独走るマルティン・カイマーとは10打差。それでも松山は残り2日間での追い上げを諦めていなかった。

「まだ何があるかわからないと思いますし、2位とはそんなに離れていません。コースが難しいので10打差とは 思っていません。まだ36ホールありますし、どれだけ差を縮められるか」

 上位進出を誓ってスタートした第3ラウンドは、ダブルボギーをたたくなど、4つスコアを落とした。首位との差は開く一方で、通算4オーバー、23位タイに後退した。しかしここまでの3日間で奪ったバーディ数は全体の4番目で10コ。爆発力があるだけに。周囲も上位進出を期待した。迎えた最終ラウンドは、出鼻をくじかれた。1番でダブルボギー、2番もボギーと、気持ちとは裏腹に上位争いから脱落。悔しい結果となってしまった。常に優勝を目指すという松山でも、この差は埋められなかった。結果はこの日も4オーバー、通算8オーバーで35位タイだった。

「やっぱり練習しかないと思います。メジャーで勝てると思っていますし、勝つと思ってやることが大事だと思います。成績が出なくても一つずつ練習をやって いけば、チャンスは巡ってくると思います」

 負けてなお強くなる。次のメジャー、全英オープンに向けて気持ちを新たにした松山。この悔しい結果が、松山の闘志をさらに掻き立てることになった。

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