日本が誇る南の島の酒といえば「琉球泡盛」。観光のメッカでもある沖縄に行けば、お酒好きはもちろん、お酒がちょっと苦手という人でも、沖縄の伝統酒である泡盛を体験してみたくなるというもの。実はこの琉球泡盛、なんと500年の歴史があるのだ。そう、もちろん、日本初の蒸留酒。焼酎のルーツということになる。
■泡盛の伝播ルートは、熱帯の国タイランドから?
時は15世紀。本土は京都室町が率いる室町時代。全国各地の実力派大名たちが戦国の世を争っていた。そのころの琉球はみやびな琉球王国時代で、中国や東南アジアとの貿易で栄えていた。その貿易の中に「蒸留酒」があったのだ。
当時、最先端の文化を持つシャム(現在のタイ)と交易をするなかで、現地の米の蒸留酒「ラオロン」の製造技術を学んだ。造り方は「タイ米」を使用し、雑菌に強い「黒麹」を使用する方法。これ、いまでも同じように造られている。さすが伝統の酒。
ただし、南蛮渡来の高級酒、庶民の酒ではなくあくまで王様の酒。製造も王府に認められた40家のみで、もし造りに失敗したら重罪というきびしい掟まであったとか。このころに製造を始めたメーカーは、今も造り続けているところがある。さすがさすが伝統の酒。
ただし、最近では、泡盛は琉球オリジナル説も前面に出てきている。当時、米の輸入はタイからだけではなく、中国やその周辺の国々からもしていたし、琉球泡盛ならではの造りや味わいは、どこからも習ったものではなく、独自のものであるともいわれている。
■なぜ「泡盛(あわもり」という名前なの?
アワモリ……という不思議な名前の由来はいろいろある。「雑穀の粟を使っていたから」とか「蒸留するときに泡がもりもり沸き立つから」とか「アルコールが高いと注ぐときに泡立つようになるから」など言われているが、私が好きな説は、「古代インドのサンスクリット語でお酒のことを“アワムリ”と呼ぶ、そこから名づけられた」という説。なんだかロマン溢れてステキじゃない? ちなみに、ナムアミダブツなどの仏教用語ももとはサンスクリット語なんだよ。
■泡盛の独特な風味を楽しもう!
泡盛は、かなり個性的な風味を持っている。その理由は「タイ米」を使うこと、「黒麹」を使うこと、などからくる。そしてもう1つ大きな要素は「水」だ。さんご礁の隆起で生まれた沖縄の土壌と海に囲まれた環境から、「ミネラル分の多いおいしい水」が、あの泡盛特有の風味を生み出しているのだ。本土での本格焼酎はお湯割りやお燗が伝統的な飲み方のようだけど、南国沖縄の焼酎泡盛は、オンザロックか水割りが似合う。
まずは、おいしい水で作った氷とおいしい水で水割りにして1杯目を楽しみたい。続いて、沖縄を代表する柑橘果物「シークワーサー」のジュースを絞りいれて2杯目。クーッ、爽快っ。3杯目は、沖縄名産の「ウッチン茶」(ウコン茶)で割る。悪酔いなしといわれるヘルシーな飲み方だ。むは~、これにゴーヤチャンプルー、クーブーイリチー(昆布の炒め煮)、ラフテー(豚ばら肉の角煮)、海ブドウ、島ラッキョウなんかをつまみたいっ。
刺身など魚介料理には、クラッシュアイスに泡盛を注ぐ、これがいい。上品な味になりすっきりと楽しめる。最近人気の「沖縄地サイダー」で割るのもいい。爽快感が増して口当たりもいい。「塩サイダー」とか「ウッチンサイダー」など個性派がある。しっかり飲んだ後の締めは、そう、沖縄そば。意外にもあっさりと、だけど深い旨味がある出汁が実にいいんよね。
え? 忘れていませんかって? 忘れていませんよ。古酒でしょ。泡盛でコレを忘れちゃいけません。古酒と書いて「クースー」と読む、熟成酒のこと。こちらは、次回の焼酎コラムでしっかり説明しよう。今日のところは、沖縄民謡とカチャーシーで、泡盛新酒を楽しむべし。
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