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「もうバスケットはできないってことすか?」スラムダンク・花道の最後の試合エピソードに涙腺崩壊

※画像はイメージです

■作中で描かれた最後の試合、全国大会2回戦・山王工業戦!!

国内累計発行部数が1億2000万部以上という、驚異的な記録を打ち立てているスポーツマンガの金字塔『スラムダンク』。不良だった赤髪のバスケ初心者・桜木花道が、湘北高校バスケットボール部に入部し、強豪校のライバルらと対戦しながらメキメキと頭角を現していく物語に、多くのファンが魅了されたものです。そんなスラムダンクの作中で描かれている最後の試合、全国大会2回戦・山王工業戦について胸アツなシーン2選をご紹介します!

■悲痛すぎる「もうバスケットはできないってことすか?」

山王との試合の終盤。湘北は圧倒的な敗北を喫するだろうという下馬評を覆さんばかりの勢いで食らいつき、残り時間2分少々ながら8点差まで巻き返していました。が、プレイ中コート外に出てしまいそうになるボールを追いかけ、花道がダイブ…! なんとかボールをコート内に押し返すものの、花道は背中を強打してしまうのです…。

花道はしばらく背中の激痛を隠してプレイを続行しますが、その異変をマネージャー・彩子に見抜かれ、「選手生命にかかわるわよ…」と忠告を受けます。その言葉を聞いた花道は、心の中で「……バスケットは……終わりってこと……………?」と呟くのです。忠告を振り切りそれでもプレイを続けた花道でしたが、意識が朦朧とするほどの激痛にとうとう耐え切れなくなり…!

プレイが中断され、コート脇で横になった花道の頭の中に、再びこんな考えがよぎるのです。

「もうバスケットは ………できないってことすか……?」

ただの不良でバスケットボールなんてしたこともなかった花道。彼がバスケ部に入部したのは、湘北高校入学初日、一目惚れした晴子に「バスケットは…お好きですか?」と尋ねられたことがきっかけでした。そのときは晴子に気に入られたい一心で、花道は「大好きです スポーツマンですから」とウソをつきました。そんな花道が、背中の激痛に苦しみながら思い出していたのは、入部してから山王戦を迎えるまでの4ヶ月間で経験してきた練習や試合の日々。そして、朦朧としながらも立ち上がり、心配でコート脇まで駆け寄ってきたい晴子にこう告げるんです。

「大好きです 今度は嘘じゃないっす」

晴子の気を惹くために始めたバスケットに、花道は自然とのめり込み、大好きになっていた。晴子のためなんて気持ちはもうとっくになくなっていて、純粋に、シンプルに、自分のためにプレイしていた。

だからこそ、普段は常に強気でお調子者の花道が、心の中で「これで終わりっすか…? …………バスケット」「もうバスケットは………できないってことすか……?」と悲痛に嘆く様子に涙腺崩壊は不可避なのです。

試合時間は残り1分少々。花道は再びコートに立つのか。湘北は絶対王者・山王を打ち倒せるのか。伝説のスポーツマンガ『スラムダンク』は、こうしてクライマックスを迎えるのです……。

■井上先生が“才能がものをいうダンク”を選ばなかった

山王との試合の最終局面。山王リードの1点差、試合終了まで残り1、2秒。背中のケガの激痛に耐えながらも、「左手はそえるだけ…」とどこか達観した表情の花道に、花道と反目し合っていた1年生エース・流川楓がラストパスを送ります。

花道は1週間で2万本という過酷なシュート練習で会得したきれいなフォームでジャンプシュート。放たれたボールは見事な放物線を描き、スウィッシュ(リングに触れずにゴールするノータッチシュート)。ゴールに吸い込まれていくのでした…。

花道の放ったシュートがブザービーターとなり、山王に湘北が勝利……!

ここからはあくまで推察ですが、作者の井上雄彦先生のこだわりで、ダンクではなくジャンプシュートにしたのではないでしょうか。

井上先生がバスケットボールというスポーツを、リアルに描写することに強いこだわりを持っていることは有名な話。それはゲーム中のプレイの描写に限ったことではなく、そのプレイに至るまでの過程なども大事にしているほどです。

花道は作中で、今回の2万本のジャンプシュートだけでなく、リバウンドやレイアップシュートの練習風景が描かれたこともありますが、実はダンクを本格的に練習しているシーンが描かれたことはありません。というか、高い運動神経を誇る花道は、ダンクに関してはあまり練習せずとも、いきなりできていましたよね。

そのため井上先生は、派手で絵的に映えるダンクシュートよりも、過酷な特訓で会得したジャンプシュートを花道のラストシュートにすることで、バスケットボールの真髄を伝えようとしていたのかも…と考えられなくもないのです。

タイトルは『スラムダンク』でも、主人公が最後に見せたのは才能がものをいうダンクシュートではなく、地道な練習で身に付けられるジャンプシュートだった――ここに井上先生のバスケ愛が凝縮されているように感じませんか?

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