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ペースメーカーは、携帯電話・スマホで本当に誤作動するのか?

電車の中
ちょっと前の話になりますが、2014年7月に関西の電車で、優先席での携帯電話・スマートフォン(スマホ)の電源オフキャンペーンが中止されたのをご存知でしょうか?

現在発売されている携帯電話が心臓に埋め込まれている医療機器「ペースメーカー」に対しどのような影響があるのかが、総務省から発表され、年々改定されているのですが、それに準じて対応したのです。

昔の携帯電話は電波出力が高く、ペースメーカーに影響を与える可能性があったので、2000年以降調査が行われ、公表されています。

総務省は2005年8月に、平成16年(2004年)度までに実施された調査結果を基に、「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」を取りまとめ、「携帯電話は22cm以上離すこと」とされ、電車の優先席や医療機関などでは携帯電話の電源をオフにすることが望ましいとされました。

植込み型医用機器の装着者は、携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、携帯電話端末を植込み型医用機器の装着部位から22cm程度以上離すこと。

各種電波利用機器の電波が植込み型医用機器へ及ぼす影響を防止するための指針(総務省)

そして平成23年(2011年)度は、古い携帯電話のタイプ(ドコモのムーバなど)ではなく、3G携帯電話(第三世代)での調査が行われ、ここでも影響なしと報告されました。そして、22cmから15cmへ指針が改定されています。

植込み型医療機器の装着者は、携帯電話端末の使用及び携行に当たっては、携帯電話端末を植込み型医療機器の装着部位から15cm程度以上離すこと。

電波の医療機器等への影響に関する調査研究報告書(総務省)

翌年の平成24年(2012年)度では、いま私たちが使用しているLTE方式での調査が行われ、ここでも影響はなしとのことでした。

平成24年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改訂(総務省)

次の平成25年(2013年)度では、無線LANとLTE方式を同時に使用したらどうなるか、調査結果を公表。1.5cmの距離で30台中2台が極めて軽微な誤作動を起こしたのみだったそうです。

平成25年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改訂(総務省)

この調査報告を詳細に読むとわかるのですが、15cm以上離すというのは、極めて安全域が高い指針だということがわかります。たとえば、満員電車の中で、携帯電話の電源を切り忘れてペースメーカーを装着した人と接したとしても、誤作動を起こすことは限りなくゼロに近いことだといえるでしょう。

しかし、だからといって、ペースメーカーを装着している人の前で堂々と携帯電話・スマホを使用するのは遠慮すべきでしょう。そもそもペースメーカーというものは、心臓の動きが不安定な方が装着するものです。心臓の持病を持っている方にとってペースメーカーの誤作動は万が一もあってはならないことです。これまでの調査でペースメーカーへの携帯電話・スマホの影響はほぼ否定されることになっていますが、せめて優先席の前くらいは携帯電話・スマホの操作を控えるのが、大人のマナーではないかと私は考えます。(執筆:菅原 道仁)

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