保育園から帰る時に先生からもらう「肝油ドロップ」を食べるのが楽しみだった人もいるはず。あんなにおいしいのにどうして1日1個しかダメなの? その理由はこんなところにありました。肝油ドロップを食べ過ぎてはいけない理由と、同じく食べ過ぎてはいけないものについて説明します。
■もっと食べたいのに「1日1個まで!」と言われた理由
お菓子のようにおいしい肝油ドロップは、帰宅直前に配られました。この理由はなぜでしょうか?
実は、身体の小さい幼稚園や保育園に通う子供たちは身体を動かすことに加えて、成長のための栄養が必要です。しかし、まだ胃も小さく、1日3食の食事だけでは必要な栄養素を十分に摂ることができません。その不足分を補うため肝油ドロップを食べさせていたのです。
名前にもある「肝油」とは、マダラやスケトウダラなどの肝臓から分離した油のこと。以前は、これに砂糖を加えて固めていたようですが、現在はビタミンAとビタミンDを混ぜ合わせて、植物由来の天然増粘剤で固めて作られています。栄養素としては1粒あたり 4kcal、ビタミンA 200μg、ビタミンD 1.7μgが含まれています。ビタミン・ミネラルは不足しがちな栄養素ですが、その中でもこれらの成分は子供たちの成長にはもってこいです。
「不足分を補うのが目的なら、おいしいんだし、1日1個なんてもったいぶらなくてもいいんじゃないか」と思う人もいると思います。それがそうもいかないのです。肝油ドロップ・・・だけに限りませんが、ある成分を摂り過ぎてしまうと、身体に悪影響を与えてしまうことがあります。
■肝油ドロップを食べ過ぎるとどうなるのか?
肝油ドロップを食べ過ぎると身体にどのような悪影響を与えるのでしょうか。
実は、肝油ドロップに含まれるビタミンAとビタミンDはどちらも「脂溶性ビタミン」の仲間。脂溶性ビタミンとは脂に溶ける性質を持つビタミンで、体内で使われなかった分を蓄積することができます。そのため、蓄積分が多くなりすぎると「過剰症」という悪影響がでます。
■ビタミンAの過剰症
頭痛、顔面紅潮、皮膚の乾燥、筋肉痛、食欲不振、関節痛、皮膚色素沈着、脳圧亢進、急性中毒、胎児奇形、仮性脳腫瘍、吐き気、嘔吐など
■ビタミンDの過剰症
食欲不振、吐き気、頭痛、皮膚のかゆみ、腹痛、筋緊張低下、脱水症、下痢、便秘、多尿、腎石灰化、腎不全、尿路結石、高血圧症、不眠など
どちらも、一気に食べてしまったのが1回だけであれば、一過性の症状のみで済みます。子供の場合は「1日1個って言ったでしょ?」と小言のひとつも言われれば、次からは盗み食いはしなくなるでしょう。
■他にもたくさんある「過剰症」
「過剰症」の問題は、実は大人のほうにあります。肝油ドロップを食べる人は多くないでしょうが、多種類のサプリメントを愛用することで、何かしらの成分を過剰に摂取してしまうことがあります。つい色々試したくなる気持ちは分かりますが、サプリメントを使ったためにかえって身体に負担をかけてしまうことも多いのです。
肝油ドロップに含まれていたのはビタミンAとビタミンDでしたが、他にも過剰症を起こすものを一覧表にまとめています。
先にも説明したとおり、脂溶性ビタミンは脂肪に溶けるため、体内の脂肪に溶け込んで蓄積されます。一方、水溶性ビタミンは水に溶けるので、過剰に摂取しても尿中に排泄され過剰症はないとされてきました。しかし、昨今のサプリメントブームで一部の水溶性ビタミンにも過剰症があることが知られるようになっています。
また、ミネラル類も欠乏症と過剰症がありますので、一覧表にまとめておきます。
ビタミンもミネラル類も日本人の一般的な食生活を送っていれば過剰症の心配ありません。「健康的な」食生活を送っていれば、欠乏症も神経質になるほど心配する必要はないと考えていいでしょう。
もっとも深刻な問題となりやすいのは、サプリメントを使用する場合の過剰症です。サプリメントは専門家の指示を仰ぎ、用量・用法を守って使用することが大切です。
(執筆:平井 千里)
<参考文献>
日本人の食事摂取基準 2015年版 (2015年10月23日アクセス)
湧永製薬株式会社 ホームページ (2015年10月23日アクセス)
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