「ももいろクローバーZ」の妹分のアイドルグループ「3B junior(スリー・ビー・ジュニア)」のメンバー(12歳・女性)が、BS朝日のバラエティー番組の収録中に意識を失い、救急搬送されていたとの報道がありました。
搬送先の病院での診断は「脳空気塞栓症」とのこと。そこで今回は、この病気について説明させていただきたいと思います。
そもそも「空気塞栓症」とは、血管内になんらかの原因で空気が入り込んでしまい、その結果として血流が停滞して、その先の臓器に酸素や栄養分が届かないために起こる障害の総称です。とくに脳血管内に空気が入り込んだときは重篤なことが多く、「脳空気塞栓症」と呼ぶこともあります。
血管には、心臓から全身に栄養を運ぶ「動脈」と、全身から心臓に帰ってくる血液を運ぶ「静脈」の2つがあります。静脈内に空気が入った場合は、100~150mlくらいが致死量といわれますが、動脈内に空気が入ってしまった場合は1mlでも致死量になり得ます。
病院で点滴や採血をするときに針をさす血管は静脈なので、点滴の管や注射器にわずかの空気が入ってしまっていても普通は問題ありません。しかし、脳血管の様子を詳しく見るためのカテーテル検査を行うときは、動脈に細い管を挿入することがほとんどなので、私たち医師はかなり慎重に空気を抜く操作を行います。
通常、日常生活において、血管の中に空気が入り込むことはありません。しかし、スキューバダイビングが趣味の人は、空気塞栓症を起こしてしまうことがあります。
水中から海面へ浮上するときに圧縮空気を吸って息を止めたまま浮上すると、肺が過度に膨らんで破裂してしまい、その結果として血管内に空気が入り込んでしまうのです。深いところから緊急浮上すればするほど肺に負担がかかるのですが、じつはプールの底くらいの深さでも、このようなことが起こってしまうといわれています。
脳空気塞栓症の症状は、脳血管が詰まってしまった場合は、意識を失ってしまったり、手足が動かなくなったり、痙攣を起こしたりと、さまざまです。
空気塞栓症と診断されたら、血管内の気体を小さくするために、高気圧酸素療法を行います。
公表されている事実が少ないので、あくまで私の推論ですが、今回の事故は、ヘリウムという物質が直接悪さをしたわけではなく、圧縮されたガスを鼻をつまみながら勢いよく吸ったがために起こった事故と考えられます。もしかしたら、肺に風船のように膨らんでいる「ブラ」「ブレブ」と呼ばれる破れやすい場所があったのかもしれませんし、卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)、肺動静脈瘻(はいどうじょうみゃくろう)といった病気があり、静脈に入り込んだ空気が動脈へ直接流れてしまったのかもしれません。
2月6日にテレビ朝日内に検証委員会が設置されたそうですので、再発防止のためにきちんと対策を講じてほしいものです。
とにかくパーティを盛り上げたいからといって、圧縮された気体を思いっきり吸うことはやめておきましょう。
そして、事故にあわれたメンバーの方の一刻も早い回復をお祈りします。(執筆:菅原 道仁)
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搬送先の病院での診断は「脳空気塞栓症」とのこと。そこで今回は、この病気について説明させていただきたいと思います。
そもそも「空気塞栓症」とは、血管内になんらかの原因で空気が入り込んでしまい、その結果として血流が停滞して、その先の臓器に酸素や栄養分が届かないために起こる障害の総称です。とくに脳血管内に空気が入り込んだときは重篤なことが多く、「脳空気塞栓症」と呼ぶこともあります。
血管には、心臓から全身に栄養を運ぶ「動脈」と、全身から心臓に帰ってくる血液を運ぶ「静脈」の2つがあります。静脈内に空気が入った場合は、100~150mlくらいが致死量といわれますが、動脈内に空気が入ってしまった場合は1mlでも致死量になり得ます。
病院で点滴や採血をするときに針をさす血管は静脈なので、点滴の管や注射器にわずかの空気が入ってしまっていても普通は問題ありません。しかし、脳血管の様子を詳しく見るためのカテーテル検査を行うときは、動脈に細い管を挿入することがほとんどなので、私たち医師はかなり慎重に空気を抜く操作を行います。
通常、日常生活において、血管の中に空気が入り込むことはありません。しかし、スキューバダイビングが趣味の人は、空気塞栓症を起こしてしまうことがあります。
水中から海面へ浮上するときに圧縮空気を吸って息を止めたまま浮上すると、肺が過度に膨らんで破裂してしまい、その結果として血管内に空気が入り込んでしまうのです。深いところから緊急浮上すればするほど肺に負担がかかるのですが、じつはプールの底くらいの深さでも、このようなことが起こってしまうといわれています。
脳空気塞栓症の症状は、脳血管が詰まってしまった場合は、意識を失ってしまったり、手足が動かなくなったり、痙攣を起こしたりと、さまざまです。
空気塞栓症と診断されたら、血管内の気体を小さくするために、高気圧酸素療法を行います。
公表されている事実が少ないので、あくまで私の推論ですが、今回の事故は、ヘリウムという物質が直接悪さをしたわけではなく、圧縮されたガスを鼻をつまみながら勢いよく吸ったがために起こった事故と考えられます。もしかしたら、肺に風船のように膨らんでいる「ブラ」「ブレブ」と呼ばれる破れやすい場所があったのかもしれませんし、卵円孔開存(らんえんこうかいぞん)、肺動静脈瘻(はいどうじょうみゃくろう)といった病気があり、静脈に入り込んだ空気が動脈へ直接流れてしまったのかもしれません。
2月6日にテレビ朝日内に検証委員会が設置されたそうですので、再発防止のためにきちんと対策を講じてほしいものです。
とにかくパーティを盛り上げたいからといって、圧縮された気体を思いっきり吸うことはやめておきましょう。
そして、事故にあわれたメンバーの方の一刻も早い回復をお祈りします。(執筆:菅原 道仁)
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